自治体法務の備忘録

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「公務員版 悪魔の辞典」

公務員版 悪魔の辞典

公務員版 悪魔の辞典

 支出負担行為の説明は、以下のとおり。
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 拙著の執筆時、「もっと初心者に分かりやすく書いてくださいよ」と編集さんに言われたことを思い出しますた(´・ω・`)

 もちろん、書名にふさわしいシニカルさもあります。
「理想の上司」架空の人物。
「理想の部下」ないものねだり。
 それって、役所だけではないのでは(^。^;)

 出版社のサイトでは、試し読みが出来ます
http://www.gakuyo.co.jp/book/b452287.html

 研修講師のネタ探しに、仕事を客観的に眺めてみたいときに、もちろんクスッと笑うために使える一冊です(・ω・)

「緊張をとる」

「kei-zuさん、人前で話すときに緊張しませんか?」
 しますよ、そりゃ(^。^;)
 こればっかりは慣れですが、書店で気になる本を見つけたときは、参考まで手を伸ばすようにしています。

緊張をとる

緊張をとる

 本書を見つけたのは、丸の内の丸善です。プレゼンに悩む若手社員が舞台女優に指南を受ける対話形式で構成されています。
 その内容は、人前での話し方だけでなく、仕事への取り組みなど、幅広く応用ができそうです。
 
「心は制御できないので、誘導をしていく」
「いきなりゴールを目指さず、経過を意識する」「その点で、成功者の体験談は、あまり役に立たない」
「自分の作ったルールにマジメにならない」
などなど(・∀・)

「議員NAVI」に寄稿「条例とは何か〜「まちのルール」のつくり方」

第一法規ウェブマガジンしました(・ω・)
特集「はじめての議案審査(条例編)」の第1回として、「条例とは何か〜「まちのルール」のつくり方」と題して、我が国の法体系における条例の役割などについて説明させていただきました。
機会ある方は、お目とおしいただけたらと思います(・∀・)
http://www.dh-giin.com/article/20190513/16273/

保険料と保険税(国民健康保険)

 市町村における国民健康保険の運営において、その収入の手段は、国民健康保険料か国民健康保険税によっています。

ーーーーー

国民健康保険法】

(保険料)
第七十六条 市町村は、(中略)国民健康保険事業に要する費用に充てるため、被保険者の属する世帯の世帯主(中略)から保険料を徴収しなければならない。ただし、地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない。

2・3 (略)

ーーーーー

地方税法

国民健康保険税
第七百三条の四 国民健康保険を行う市町村(中略)は、(中略)、国民健康保険の被保険者(中略)である世帯主(中略)に対し、国民健康保険税を課することができる。

 一~三 (略)

2~28 (略)

ーーーーー

 後発の介護保険後期高齢者医療制度は、「保険料」の取扱いです。「保険税」での取扱いはありません。

 なぜ国民健康保険だけ「保険税」の取扱いも可能であるのかは、よく質問を受けます。

 大阪府がわかりやすい資料を掲載していましたので、よろしければご参照ください。

ーーーーー

国民健康保険における保険料と保険税の現状等について】

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/5211/00203264/46_ryouzeigenjyou.pdf

○昭和26年 国保税が創設される 

 (略)

○平成11年 各保険者の主体的な判断による「保険税」から「保険料」への移行を進めていくとともに、 制度的な「保険料」への移行を義務付けることは、保険者である地方公共団体の意見を踏まえ 進めてい く(「国民健康保険税の保険料移行に関する検討会報告書」H11.7.14)

ーーーーー

 消滅時効の期間や徴収権の優先順位など、「料」と「税」で随分と違いがあります。皆さんの自治体では、どちらを採用しているでしょうか。

千葉大学でゲスト登壇しました

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 横田明美先生(千葉大学)の行政法の講義にゲスト登壇させていただきました。
 講義室にびっしりの学生の前、事前打ち合わせがほぼない状態で、後半は横田先生とアドリブで掛け合い(^。^;)
 大いに緊張いたしましたが、一人でお話しさせていただいた部分を掲載いたしましたので、よろしければご参照ください。

 なお、ことの発端は、先週の土曜日に、ちば法務研究会で千葉大学を訪れたことをTwitterでつぶやいたところ、「こんど平日においでよ(大意)」とお誘いをいただいたもの

 中4日での登壇でしたが、母校の後輩たちに何か伝えられればと頑張りました。

法の種類と執行機関多元主義(講義再現)

 私が千葉大学を卒業したのは1991年3月ですから、30年近くなります。正門前の3階建てのビル、今は1階の美容室がその頃は喫茶店で、そこでアルバイトしてました。懐かしいですね。 

【法令と例規の関係(補足)】

kei-zu.hatenablog.com

 先ほど横田先生から、私が船橋市の研修でお話しした内容を引用して、法令と例規の関係についてご説明がありました。
 法律は制度の安定性を担保します。介護保険を例にすると、保険の加入時期は40歳なんですが、いきなり20歳になったら皆さん困るでしょ。
 一方で、法律は機動的に対応がしがたい側面があるんですね。法律の内容の詳細なルールとして介護保険法施行令(政令)や介護保険施行規則(省令)が定められるのは、そんな理由があります。
 介護保険料の額など、地域における個別のルールは、介護保険条例(条例)で定められています。自治体ごとに介護保険料の額って違うんですよ。
 法令・例規の関係は、先ほどの図では上下に記載されていましたが、私たちの周りを見回すと、モザイクやステンドグラスのように組み合わさっているイメージです。

【二元代表制と議員内閣制】
 法律は、国会で制定されます。条例は、自治体の議会。でも、自治体の長は独自に「規則」を定めることができます。政省令が直接法律の根拠を必要とするのと対照的です。
 これは、このあいだ選挙がありましたが、長も議会の議員も選挙によって選ばれていることによります。このような仕組みを「二元代表制」といいます。
 これに対し、総理大臣は選挙で選ばれていません。え? 安部さんって選挙で当選してるよって? うん、国会議員として当選しているんです。内閣総理大臣は、国会議員から選出される。このような仕組みを「議員内閣制」といいます。

教育委員会と執行機関多元主義
 皆さんは図書館って使われます? 大学図書館じゃなくて、お住いの近くにある、あるいは高校時代にご自宅の近くにあった公立図書館です。
 そんな公立図書館ですが、市役所や町役場では、社会教育法という法律に基づいて教育委員会によって管理されています。
 教育委員会ってなんでしょう? 市の教育行政に携わる機関です。
 私の子どもが小学校に入学するとき、学区に基づいて小学校の指定がありました。ハガキが届いたんですけど、差出人は「教育委員会」で、「市長」じゃないんです。
 逆にいうと、市長は教育行政に関する権限がないんですね。

 ちょっと説明すると、市役所のすべての仕事について市長に権限があるわけではありません。こないだ選挙があったでしょ。選挙事務の権限は、選挙管理委員会という組織にあります。
 選挙事務の権限が市長にあったら「俺、もう一回当選しよ」と不正を働くかもしれない。そういう疑いが発生しない仕組みになっているわけです。

 同様に、学校教育や社会教育、文化行政を担う教育委員会は、教育の中立性、継続性、安定性を確保するために、市長から独立した仕組みがとられています。
「委員会」という名称からわかるように、複数の人数で構成されています。教育委員会だと、一般的には5人で構成されています。
 5人の会議の上で、こうしよう!という意思決定をするのですね。会社の取締役会に近いイメージです。
 知事や市長だとお一人ですから、急ぎの案件ですと、「失礼します!」と執務室に入って「いかがでしょうか?」と判断を仰ぐことができますが、5人の会議ですとそうはいきません。
 私の市では、毎週第3水曜日に定例教育委員会会議が開催され、月ごとに教育行政の運営判断が行われています。

 このような機関は、市役所ですと、ほかに農業委員会・人事委員会・監査委員などがあります。いずれも独立性が期待される仕事に携わっています。

 監査委員は、会計管理や事務執行についてチェックをするのが仕事ですから、市長の権限外にあった方が公正なチェックができるのはわかりますよね。
 このような仕組みを「執行機関多元主義」といいます。私は、研修などでこの仕組みを説明するときには、アタマがいっぱいある「ヤマタノオロチ」みたいでしょ、と例えています。
 市長は選挙で選ばれているのに、なぜこんな仕組みになっているのでしょうか? 権力は一か所に集中しない方が良い、というのが人類の経験則で、そのための法制度上の工夫なんですね。
 もっとも、アタマがいっぱいあると、どっちに進むか困ることがある。そのため、市長には「総合調整権」というものがあります。

 市長村長や知事のことを「首長」といいますが、首が他より長いからだよ、といつも冗談を交えて説明しています。

【図書館の役割と法律改正】
 図書館に話を戻すと、今、大きな見直しが行われようとしているんですね。
 自治体が条例で定めれば、図書館の所管を教育委員会から首長部局に移すことができるという法律が国会で審議されています。国の資料では、移管によって、長が所管する観光振興やまちづくり分野との一体的な所管ができるということです。
 確かに、現行制度でも、駅前の再開発などで、幅広い集客を見込んで、その中心施設の役割を図書館に期待されることがあります。
 集客施設としての図書館で全国の注目を浴びたのが、九州の武雄市でした。ツタヤが管理運営していて、スターバックスが併設される図書館は、実際、多くの市民の利用があるようです。

 ちくま新書の「つながる図書館 コミュニティの核をめざす試み」という非常に良い本があります。

 その中で、武雄市図書館の否定ありませんが、「武雄市民が求めていたのは、図書館ではなくてスタバだったのではないか」とちょっと厳しい指摘があります。 

図書館戦争

図書館戦争

 ちょっと前に「図書館戦争」という映画がありました。ベストセラーの映画化です。その中で「図書館は民主主義の砦だ」という記述があったと記憶しています。「民主主義の砦」という言葉は、社会教育施設という役割に基づくものです。
 このたびの法律の改正に対しては、社会教育施設という役割が適正に果たされるか注視が必要だ、という指摘があります。

【教わる、疑問を持つ、勉強する】

 ここでまた質問しましょう。皆さんが欲しい図書館は、教育施設ですか? それとも居心地のよいスタバですか? 社会教育施設としての図書館の役割を変えないためには、どのような工夫が必要でしょうか?

 どうです。何かモヤモヤするでしょう。
 また、今日の議論をひっくり返して、図書の代わりにネットワークなどの情報を集積する施設を知事や市町村長が設ければ、それは社会教育施設の図書館とどう違うのでしょうか?
 ツタヤが図書館を運営するなら、アマゾンが図書館を運営する可能性はないのか? 実現したら、どのようなものになるでしょうか?
 そのような疑問が生じたら、講義の合間、ノートに「自分への突っ込み用」のメモを書いてみてください。そのような疑問は、勉強のきっかけになります。
 今日はありがとうございました。

公務員になられたばかりの方への参考書

 古くからの知人に、「ブログ更新してくださいよ」とメールをいただきました(えー

 前回は、私の異動の内示について思わせぶりな「引き」で記述を終了しておりました。読者の皆様は、なんとなくご想像されているかもしれませんが、引き続き法規担当を続けております。

 さて、先日、新規採用職員の皆さんに「ゼロからスタート 地方自治」のお題で、2時間ほどお話をさせていただきました。

 講演に先立って、ご紹介させていただいた本がこちらです。

 

公務員1年目の教科書

公務員1年目の教科書

 

  公務員に期待される役割について、民間経験を踏まえて公務員になられた著者のご経歴を踏まえて説明されています。

 公務員にとって仕事ができるのは当然のこと。大事なのは「信頼」だ、という指摘には、ベテランになった(なってしまった)私も居住まいを正せられます。

 拙blogでのご紹介はこちら↓

kei-zu.hatenablog.com

 

自治体職員のための文書起案ハンドブック 増補改訂版

自治体職員のための文書起案ハンドブック 増補改訂版

 

  公務員にとって、文書起案は避けて通ることができません。一方で、公文書に期待される役割は、ますます大きくなってきています。

 本書は、起案に際して最低限必要な法律の知識(契約の相手方である「法人」の意味など)も含め、文書の必要性と事務のコツについてわかりやすく説明しています。

 なお、著者の澤先生(山陽学院大学)は、広島県庁にご勤務された経験があり、「『広島風お好み焼き』って、広島では禁句なんですか」とメールを差し上げたところ、「怒られるでしょうね」とお返事をいただいたことがあります(^o^;

 本書について、月間「自治実務セミナー」(第一法規)で、私が書かせていただいた書評はこちら↓

http://navi.e-reikiclub.jp/uploads/2013/06/1372121396786.pdf

 当日、私が説明させていただいた地方自治についても、何冊かご紹介させていただきましょう。

 

地方自治のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

地方自治のしくみがわかる本 (岩波ジュニア新書)

 

  岩波ジュニア新書は、高校生向けということで、読みやすくわかりやすい。本書だけでなく、良書が多いシリーズです。

 

  私が法規担当になったばかりで、右も左もわからない頃、今井先生(地方自治総合研究所)のご本には随分と助けられました。もうちょっと詳しいことが知りたいと思われたら、

 

地方自治講義 (ちくま新書 1238)

地方自治講義 (ちくま新書 1238)

 

 にも是非手を伸ばしてください。

 最後に、私の本もご紹介しておきましょう。

 

スッキリわかる!  地方自治法のきほん

スッキリわかる! 地方自治法のきほん

 

  地方自治法の中から重要項目数を70に厳選し、各項目を見開き2ページで解説しています。その冒頭には「ざっくり言うと」と題したポイントを掲載しており、お手元に辞書代わりとして置いていただけたら、実務のお役に立てるのではと思うところです。