自治体法務の備忘録

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メイキング・オブ・「公務員の仕事の授業」(4) 共著者編

 編集者さんによると、共著の場合は相性があるようで、場合によっては「向こうが進めているだろう」と原稿がすすまないこともあるようです。
 今回の共著者である米津さんとは10年来の交流があり、一昨年秋の「かながわ政策法務研究会」では、「"法規"から見た政策法務」の題で一緒に発表させていただいたこともあります。
 このたびの執筆でも、競うように上がっていく原稿に「共著のよい効果が出ていますね!」と編集者さんからお褒めの言葉をいただきました。
 本書の第6章「議会」に関する記述中、二元代表制に関する説明で「何か図が欲しいですね」と申し上げたところ、チェック・アンド・バランスの関係が一目でわかるよう、天秤の両端に「長」と「議会」を置いたイラストを用意されて、「うまいっ」と膝を打ちました。
 なお、米津さんとは、会員制のウェブサービスである「議員NAVI」で、議案審査についての連載を交代で担当したこともあります。機会がある方はご覧いただけたらと思います。
・私の担当部分【条例とは何か 〜「まちのルール」のつくり方〜】https://www.dh-giin.com/article/20190513/16273/
・米津さん担当部分【執行機関による条例審査の要点〜条例案ができるまで〜】https://www.dh-giin.com/article/20190610/16569/

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

メイキング・オブ・「公務員の仕事の授業」(3) 内容編

 本書に掲載する内容の検討は、「ネタだし」から始まりました。
 右も左もわからない中で、役所に入ったばかりの方が疑問に思うことってなんだろう?
 お若い編集者さん(女性)から「自分が社会人になって悩んだこと」を聞き、執筆者2人がうんうん悩む一方で、編集者さんによる読者調査が行われました。
 一方、私もTwitterでアンケートを行ってみました。

【質問】
役所の若手職員の方にお聞きします。
これがわからないんだよ、わかりやすい説明が欲しい。
【結果】
・伝票処理を含む財務会計 29%
・クレーマー対応を含む窓口業務 24%
・法律・条例と仕事との関り 19%
・議会対応でなぜ上司は忙しそうなのか 29%

 皆さん方は、どの項目に投票されるでしょうか。母数も限られ期間も十分ではありませんが、なんとなく得ていた感触が裏付けられた感があります。
 その後も度重なる打ち合わせと項目の整理・入れ替えなどを経て、完成した目次は以下のとおりです。

目次
はじめに 「どうしたら? 」を「こうすれば! 」に

1時間目 公務員になったら
 01 地方公務員ってどんな職業? 地方公務員制度の概要 -地方公務員法
 02 公務員の今日と今年をどう過ごす? スケジュール管理の基本 -会計年度・暦年
 03 あなたは住民から見られている? クレームを防ぐ心構え -公務員のマナー
 04 困ったときはどうすれば? 窓口対応のポイント -窓口対応・行政対象暴力
 05 希望と違う配属先になってがっかり? 人事異動の乗り切り方 -人事異動
▼COLUMN1 上司や先輩は意外と教えてくれない?

2時間目 公務員の基礎知識 組織編
 01 住民自治と団体自治ってどんな意味? 自治体の課題とキーワード -地方自治の本旨
 02 仕事の内容は何で決まっているの? 自治体の3つの事務 -地域における事務
 03 自治体の仕事って何があるの? 自治体の組織と役割分担 -執行機関
 04 決裁って何のためにあるの? 自治体の意思決定 -決裁・専決
 05 市と県は何が違う? 市町村と都道府県 -自治体の種類
 06 地域は自治体だけで支えられる? 地域を支える様々な団体 -「公共」の担い手
▼COLUMN2 役所の仕事って何がある? ~番外編

3時間目 公務員の基礎知識 もしものとき編
 01 住民の「知りたい」にどう応える? 情報公開と説明責任 -情報公開制度
 02 「訴える」「弁償しろ」と言われたら? 訴訟の種類と対応 -行政訴訟の種類
 03 審査請求が提起されたら? 行政処分と審査請求 -審査請求
 04 監査委員って何をするの? 監査の種類 -監査
▼COLUMN3 ガソリンが切れたら車は走らない

4時間目 公務員の基礎知識 お金編
 01 「予算」ってなんだ? 1 予算の種類 -予算の基本1
 02 「予算」ってなんだ? 2 予算の内容 -予算の基本2
 03 「歳出」には何がある? 役所が払うお金の種類 -歳出の種類
 04 「歳入」には何がある? 役所に入るお金の種類 -歳入の種類
 05 お金を払うときはどうするの? 支出と収入の手順 -会計事務
 06 入札ってなんだ? 契約事務の種類と手順 -契約事務
 07 歳入歳出の結果は? 決算の内容と手続 -決算
 08 財産に違いがあるの? 行政財産・普通財産 -公有財産
▼COLUMN4 町内を回ってみよう

5時間目 公務員の基礎知識 法律編
 01 法律に「偉い順」ってあるの? 法令と例規 -法律の基本1
 02 条文に「決まり」はあるの? 条文の構成 -法律の基本2
 03 条文はどう読めばよいの? 条文を読むコツ -法律の基本3
 04 どうやって勉強したらよいの? 法律知識の習得法 -自己研鑽
▼COLUMN5 「行政処分」って、なんだ?

6時間目 公務員の基礎知識 議会編
 01 バッジを付けている人に出会ったら? 議員対応の基礎知識 -議員対応
 02 議会はなんのためにあるの? 自治体運営のチェック&バランス -議会の役割1
 03 議会って何をしてるの? 用語で見る議会のサイクル -議会の役割2
 04 議決事件ってどんな事件? 議会の議決と専決処分 -議会の議決
 05 議会の本会議と委員会の関係は? 委員会制の基礎知識 -委員会制・100条委員会
 06 政務活動費は、なぜよくニュースになるの? 政務活動費の意義と課題 -政務活動費
▼COLUMN6 「物知り」よりも「調べ上手」

おわりに

「はじめに」の中で「「どうしたら? 」を「こうすれば! 」に」のフレーズが出てきたときは、執筆途中にもかかわらず、この本できた!と思いました(そういう瞬間って、あるのです)
 
「おや?」と気になる項目がある方は、お手に取っていただき、中身を確認いただけたら幸いです(^^

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

メイキング・オブ・「公務員の仕事の授業」(2) 執筆編

 今回の本は縦書きです。私にとっては、「法実務からみた行政法」以来5年ぶりの書式。

「原稿は、このレイアウトを使ってくださいねー」
 編集者さんに指定された書式がWord縦書きでした。
 ところが、このレイアウトに苦戦。安さ優先で選んだ私のPCにはMicrosoft Officeは入っておらず、互換ソフトのKingsoftを使用したからです。本書で数多い図表が、意図した位置になかなかおさまらないのですね。
 そんな苦労を共著者の米津さんにお話ししたところ、「わかります。私もOfficeを使いますが、マックなので」
 俺は貧乏自慢をしているんだよ、という言葉を飲み込んだのは内緒にしておきましょう(ノД`)
 冗談めかして書きましたが、共著者がいるのは、執筆の大きな励みになります。
 分野別に大まかな分担を決めたのですが、執筆後も互いに意見を言ったり手を加えたりしたので、本書に分担区分は掲載していません。
米津さん「〇〇〇についてkei-zuさんが書いた文章、熱量が少ないですよ。私が加筆してよいですか」ああ、すいませんすいません(^。^;)
 長い執筆期間で、ともすれば挫けそうになる気持ちを共著者に支えていただく場面は少なくありませんでした。
 そのようにして出来上がった本書が、自治体の現場で苦労されている職員の皆さんのいささかにでも助けになればと思っております(`・ω・´)
疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

メイキング・オブ・「公務員の仕事の授業」(1)喫茶店編

 12月10日発売の「公務員の仕事の授業」、今回から何回かに分けて、舞台裏をご紹介させていただきます。

 今回は、「喫茶店編」です。

 この度は、米津孝成さんを共著者に迎えての共同執筆でした。メールなど電子機器を使用した情報の交換は密接に行いましたが、細かなニュアンスのやり取りとなると、面と向かっての打ち合わせがやはり必要です。

 退勤後、双方の勤務場所から無理のない範囲でということで、よく利用したのが、八幡の「Cafe 蛍明舎」です。

 まあ、リンク先のフォトジェニックな店内の様子をご覧になってくださいな。

 編集者さんも含めての打ち合わせでは、「著者紹介は、この素敵な店内で撮った写真を載せましょうか」なんて話していました。

 ちょっと脱線すると、結局写真は、装丁の準備の際に、編集者さんから求められてバタバタとFacebookに掲載のものを送りました。一方の米津さんは、ちょっと構えた素敵な写真を準備されていて、 なんかちょっとズルい。

 私が足を伸ばしにくいときは、船橋の「星乃珈琲店」を利用しました。

 船橋東武百貨店は駅に直結で、ほぼフロアごとに喫茶店があるのですが、その中でも星乃珈琲店は終業時間が遅く、仕事帰りの打ち合わせに重宝しました。

 いずれのお店の打ち合わせでも、コーヒーと一緒にケーキをいただきました。頭使うと、糖分がおいしいよね。

  本書は、何より「読みやすく、わかりやすく」を心掛けています。読者の皆さんも、コーヒーを味わいながらページをめくっていただけたらと思います(^^

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業

 

 

「マンガでわかる! 自治体予算のリアル」

マンガでわかる! 自治体予算のリアル

マンガでわかる! 自治体予算のリアル

 本書のタイトルに「リアル」とあります。自治体の職員にとって、財政部門は「怖い」存在である一方で、予算が担う役割については「ちょっとわかりにくいな」と思われることもあるのではないでしょうか。
 本書の執筆者は、本文とマンガともに現役の自治体職員であり、庁内の緊張関係はご存じで、誇張されてはいるもののマンガ部分の記述には「あー、わかる」と登場人物に親近感を持たれるかと思います。
 
 「マンガでわかる!」という構成は、実は難しくて、下手をするとマンガの中の吹き出しにびっしりと説明セリフが並ぶものになりかねません。
 一方で、文章による解説の導入としてマンガが置かれる本書のような形式もありますが、本書の興味深いところは、マンガ部分と本文の「噛み合い」にあります。
 マンガの中で、市長の公約である「子ども医療費の助成」への財源ねん出についてドラマチックな展開がある一方、本文では、想定しうるその効果に比して「際限のない自治体間競争が始まっている」と提示する多面的な視点に、視界を広げられる思いがします。
 
 本書のクライマックス、市の一大イベントである花火大会では、それまでのドラマで緊張関係も生じた登場人物たちが、夜空に広がる大輪の花火を見上げます。
「市民の笑顔が間近だ。人の笑顔が仕事の喜びになるっていうのは、原点だな」
 正直、ちょっとウルっと来ましたよ。
 
 最後に、来年度予算の編成に向けたこの時期、本文の執筆者である定野司さんの文章を引用しましょう。

「要求なきところに査定なし」とは、「事業課の熱意が感じられないようでは、とても予算はつけられませんよ」という財政課の気持ちを表現したものです。それは同時に、「予算をつけると査定したからには、事業課にかわって財政課が、唯一の予算編成権者である首長に掛け合いますよ」という決意の表れでもあるのです。
(156頁)

 さあ、年度も佳境に入ります。

「Q&Aでわかる業種別法務 自治体」

 中央経済社からの新刊。弁護士向けの業種別解説シリーズです。

自治体 (【Q&Aでわかる業種別法務】)

自治体 (【Q&Aでわかる業種別法務】)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 中央経済社
  • 発売日: 2019/11/09
  • メディア: 単行本
 正直な話、自治体の業務は、福祉部門から土木部門など幅広い。また、法律に基づく行政処分(公権力の行使)だけではなく、私人としての立場で行う法律行為(契約や境界の確定など)も少なくありません。
 1冊にまとめる編者のご苦労はあったと思うのですが、1章〜3章「自治体の組織と職員」「自治体の事務一般に関わる事項」「個別の分野における法務」にまとめられた内容は、読者の理解の端緒となる事例が厳選されています。
 4章「自治体の争訟」では、法律に定める自治体の「特別なルール」が端的に説明されていますし(審査請求についての説明を含む)、5章「災害と自治体」の内容は、大規模な災害が少なくない近年において心強いことと思います。
 法制執務についても触れられていますが、限られた紙幅で細かい「お約束事」を網羅することはもとより不可能。ここでは、事例を端的に紹介しています。
 うまいなあと思ったのは、「又は」「若しくは」・「その他」「その他の」の使い分けや、技術的な改め文の構造について、この度の改正民法が題材とされている構成です。これなら弁護士である読者の皆さん、頭に入りやすいでしょうね。
 コラムで公務員の勤務関係について触れられるなど、「ここ知っといて」のポイントも抑えられています。

 民間労働者の雇用関係は契約(労働契約)に基づくものですが、自治体職員の勤務関係については、行政行為(公法上の行為)であると考えられています。(中略)そのため、自治体職員の勤務関係に関する相談を受けた場合は、地公法や各自治体の条例等を確認・検討した上で回答する必要があります。
(34ページ)

 お値段はちょっと張りますが、自治体の法規担当の本棚に置いても参考になる内容であると思います。
 なお、「条例の制定過程」の説明では、拙著『自治体の法規担当になったら読む本』を参考文献として挙げていただいております(123頁)。感謝<(_ _)>深く深く