自治体法務の備忘録

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「「終活」事業と自治体」報告@かながわ政策法務研究会

 先頃zoomで実施された、かながわ政策法務研究会で、「「終活」事業と自治体」と題した報告をさせていただきました。
 昨年「法学セミナー」誌の特集「終活と法」への寄稿をもとに、その後の動きも含先ごろた内容です。
 神奈川県大和市では、先の6月議会において全会一致で執行部提案の「終活条例」が可決されました。

おひとりさまが今後ますます増えていくことが予測される中、大和市は、これまで行ってきた終活に関するさまざまな施策やそれを貫く理念を条例という形で位置づけることで、「一人になっても独りぼっちにさせないまち」を実現していきます。

「大和市終活支援条例」を制定しました|YAMATO発見ライブラリー

 ネットのニュースでは、そのことを取り上げた記事は見つけられませんでしたが、今後の全国の動きは気をつける必要があると思います。
 報告に当たっては、自治体学会のため一昨年前に「墓じまい」について聞かせていただいた、都立八柱霊園うめや石材店の三浦輝美さんのお話しを参考にさせていただきました。改めてありがとうございます。
 なお、上記の「法学セミナー」の終活特集は、kindleで500円で購入できます。ご興味ある方は、よろしくお目通しください(o^-')b

 

「条例の種を見つけて作れる!変化に応じて見直せる!「生きた」議員提案条例をつくろう」

 岩手県議会事務局に努められた経験をお持ちの著者による議員提案条例に関する解説。
 内容は、議員提案条例の意義と策定のプロセス、立案に当たっての注意事項など。

 会派の意見とりまとめや委員会の運営などの説明は、実務に詳しい著者ならでは。
新規提案だけでなく、首長提案条例に対する一部改正も事例を挙げてポイントを解説しています。

 なお、立法事例として挙げられた中には「乾杯条例」「ネット・ゲーム依存症対策条例」など議論があるものもありますが、著者は留意しなければいけないポイントについて指摘を忘れません。

 独立した議員を個人商店に見立てて、「チーム議会としての組織力向上は商店街活性化の発想で」(158頁)という指摘にはなるほど!と思います。

「財政学の扉をひらく」

有斐閣
「財政を学び、論じることは、私たちの生き方を問うことに通じるのである。」(156頁)
 書名に「扉をひらく」とあります。本書は、財政学の具体的な内容(数式で示されることも少なくありません)を学ぶ以前に知っておきたい、初歩的な知識や考え方についてわかりやすく解説しています。
 巷間で広く議論される極端な財政出動の是非や消費税の要否などのほか、地方財政の役割などその範囲は幅広い。
 欧州では、社会保険料から税に国民負担を移す動きがあるとのこと。社会保険料では所得の分配等の機能に限度があるという指摘は興味深い。
 いろいろ考えさせられる内容でありながら、読みやすいので、財政にご興味ある方はお手にとっていただけたらと思います。

「地方自治論」

 副題の「2つの自立性」とは、「地域社会」と「中央政府」にそれぞれ対する地方政府の自立性をいいます。前者としては、選挙制度や条例、行政組織など、後者としては、地方財政制度などを説明。
また、行政サービスの例として学校教育・子育て行政・高齢者福祉を挙げて、自治体における試行錯誤をすくい上げています。
 財政部門に身を置いた立場としては、「財政規律の維持」「地域間格差の是正」「地方政府の自立性」の3つの制度的理念のうち、最大で2つしか満たすことができないという指摘は興味深く思いました(169頁)。
 記述が幅広いので、興味深いトリビアも豊富です。
 単独で学校を維持することが困難な自治体も出てきた結果、県境に「高知県宿毛市愛媛県南宇和郡愛南町篠山小中学校組合立篠山小学校・同中学校」という長い名前の学校があるといいます(190頁)。
 引用文献は幅広く、論述も偏りがない。地方自治制度の幅広く確認されたい向きにおススメです。

Re:行政の終活担当窓口のかたへお願い

 何故、墓石屋が地域包括センターや社協とつながりを持とうとするのか。
 それは、施設に入りながらお墓を管理していたお客様の死亡情報を得ることができなかったからです。そして、ご自身のお墓に埋葬されることもなく、縁故者でもない墓石屋はお客様のご遺骨の行方を調べることもできませんでした。(中略)霊園使用許可書は今もお預かりしたままです。墓所には使用料が一定期間以上滞納されたときに立つ立て看板が立ちました。いずれ、無縁として改葬されることでしょう。
https://umeya400.com/ume-log/archives/4043?fbclid=IwAR0B7Dn_PbFZOzoqgfx031Bt0LHwDvMeHHN9tCxHMQTaEkBVKAeX3fB2kAs

 上記は、松戸市の「うめ家石材店」おかみさんブログからの転載です。
 うめ家石材店さんには、自治体学会でのパネリスト出演と「法学セミナー」誌の「終活」特集に寄せた拙稿の準備のためにお話しを伺いました。

 行政の終活担当窓口の方へお願いです。
 お客様が大切にしているお墓を、その人目線で話をきいて下さい。そして「お墓があるか・ないか」だけでなく、どうしたら、その人が大切にしている「お墓」に入れるか、お墓じまいの費用をどうやってねん出するか一緒に考えてください。

 「終活」の語自体は、「就活(就職活動)」「婚活(結婚活動)」の流れをくむ比較的新しい造語です。名前を与えられたことにより、従来は敬遠されがちだった「死を巡る諸問題」について、比較的取り上げられやすくなった感があります。逆に言えば、それらを取り上げざるを得なくなった現在の社会的背景が存在しているとも言えます。
 自治体の終活事業は端緒についたばかりであり、他団体との連携を含め、その実施は手探りであるのが現状です。今後の進捗については、注視が必要でしょう。

Re:「○○でやったやつ」

 半鐘さんがひさしぶりのご投稿
 お帰りなさいませ(メイド風

マイナンバーカードの発行を地方公共団体情報システム機構が行うことになったため、手数料条例の改正(再交付手数料の削除)が必要なんだそうですね。
http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-1204.html?sp

「現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術」

 

現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術

現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術

  • 作者:岡元 譲史
  • 発売日: 2021/05/21
  • メディア: 単行本
 

  著者の経験を踏まえ、滞納整理に関する心構えから具体的作業、精神的負担の多さによるストレスへのケアまでバランスよくまとめられています。

 見開きで項目が一つずつ説明されており、読みやすい構成。新規赴任者は、気になったところから読み始められます。
・短期間の「納付計画」で一日も早く滞納を解消する
・滞納者の言い分に振り回されない
はもちろんのことですが、
・傷ついた心のための回復薬を常備しよう
・滞納者が顔見知りだったらどうすればいい?
など、厳しい環境の読者に著者は寄り添います。

 コラムで紹介された、著者のお子さんが小学校でお父さんの仕事を先生に誇らしげに語ったというエピソードには、胸が熱くなります。