自治体法務の備忘録

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 ええとですね、いわゆる「自治基本条例」には、いろいろ言いたいことがあるのですが。
自治基本条例で第一人者でいらっしゃる辻山幸信先生((財)地方自治総合研究所)が参画された川崎市自治基本条例(案)が公開されています。
http://www.city.kawasaki.jp/20/20bunken/home/site/jichi/houkoku/jyoureian.htm

 (議会の設置)
第10条 市に、議事機関として、選挙によって選ばれた議員で構成される議会を設置します。
 (市長の設置)
第13条 市に、選挙によって選ばれた市の代表である市長を設置します。

 目を疑いましたよ。先生のお言葉によると、市民の基礎自治体への行政に係る信託を明文化するために自治基本条例が必要であるわけので、法令に重複する内容が記載されるか否かは関係ないそうです。むしろ、自治体が自ら決めるべきものを明らかにすることにより、「地方自治法」を整理して「自治基本法」なる体系にするためにも、全国の自治体の自治基本条例を策定していく意味があるのだ、とのこと。でも、「市に市長を置く」って、凄い違和感を覚えるのは私の頭が古いせいですか。
先生は、自治日報に「市民ワークショップの事務局であった法務歴数十年の主幹は、参加者に『あんたは黙っていてくれ』と言われて、夜中に自分の机で号泣していました。」旨の内容を書かれていたが、号泣したくなりますよ。法の「体系」の中で、実務に係る取扱いをどのように理論づけて位置づけるか、ということに、法制執務担当は(オーバーでも何でもなく)心血を注いでいるわけですから。

 「政策法務」論においては、
 ・「政治学」からのアプローチと「法学」からのアプローチの両面があり、
 ・「法学」からのアプローチにおいても「立法論」と「法解釈論」の両面がある
ということが、最近になってようやく理解できてきました。
 昨今注目を浴びる「自治基本条例」ですが、上記の辻山先生は行政学の第一人者でいらっしゃるわけですが、政治学者であった松下圭一先生の直系にあたる、ということを念頭におく必要があります。先の先生のお言葉も多分に「政治的」であると言える(悪い意味ではなくて)。問題は、論者のそれぞれのお立場を念頭に置かないと、政策法務論は思考の道で迷う、ということです。
 その意味で、政策法務でご活躍される方々を体系付けようとロードマップを示された、千葉大の鈴木庸夫教授の業績はすばらしいと思います。しかし、同体系に位置づけられた各論者も厳密にご活躍の分野が分類されるわけではなく、類似の行政課題に携わってもいらっしゃるわけで、その違いについての説明を人に求められたときに窮してしまった経験が個人的にあったり。

 ううむ、詳しいことはまた今度書きます。