自治体法務の備忘録

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「宣言的な条例」について

 

政策法務と自治体

政策法務と自治体

といえば、政策法務論でエポックメイキングとなった書籍ですが、一応突っ込んでおきます(^^;

(23頁)
 自治体運営の基本原則および方針をしめすものについては、形式にとらわれることなく、条例によって定め、、法的効果をもたらすべきであろう。ある在日フランス人は、「憲法で保障(kei-zu注 本書記載のママ)されていることを、地方議会や地方自治体や、さらには任意団体のような存在が、決議し、宣言するというのは、いささか腑に落ちない。はっきりいえば、こんにちの日本は『宣言大安売り』、『宣言乱用』の国である。」と指摘する。(ポール・ボネ『不思議の国ニッポン』(1)82頁)

 ポール・ボネというフランス人はいません。

今日では、その正体が作家、評論家の故・藤島泰輔であったことが判明している。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A1%BC%A5%EB%A1%A6%A5%DC%A5%CD?kid=67361

 もちろん、ここでは前段の指摘こそが重要であるので、本論の先見性(本書は89年刊行)について、なんらけちをつけるものではない、つまらない揚げ足取りです。ごめんなさい。
 それにしても、ボネさん、「日本人とユダヤ人」と並んで、罪が深いな。
 なお、旧自治省で分権一括法の策定に携われた幸田雅治先生は、

政策法務の基礎知識―立法能力・訟務能力の向上にむけて

政策法務の基礎知識―立法能力・訟務能力の向上にむけて

において、「いわゆる理念条例」について次のように慎重なご意見をおっしゃっています。

(単なる理念だけを表明するだけの条例は)当該地方公共団体の基本的な理念、政策を長と議会共通の意思として表明するという意義はあるにしても、乱用すれば効果は薄れることになりますし、更には、条例自身の権威を損ない、自治立法権の空洞化を招くことにもなりかねませんので、慎重に対応する必要があると思います。

 「理念的な規定」が「法体系」になじまない、というご主張は、ご経歴におけるご経験によるものがあるのでしょう。