自治体法務の備忘録

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法制執務担当の限界

 2月28日http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050228にいただいた、りょんさんのコメント

私も、首長がこれで良いと言っていると担当に訴えられたら、「俺はこう考えると確かにあんたに伝えたぞ。実務を遂行するのはあんただから、あんたが考えて然るべき人と相談して決めてろ。」としかいえません。

 偉そうなことを言っておきながら恐縮ですが、ええ、言ってます。私も言ってます。言い倒してますわ。
 「法制執務」が結局のところ「技術」や「知識」であるのに対し、「政策法務」は「動機」や「行動」であると思うわけで、全庁的な「政策法務」の運営に当たっては、前言と矛盾するようですが、法制執務担当の関わりは、きわめて限定的なものになってしまいます。
 この点、http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050211#p1で掲載しましたところの山口道昭教授(立正大学)の

法制執務担当課としては、原課に対して「戦略法務(解釈上の冒険をする。違法の可能性あり。)」と「企画法務(解釈上の冒険をしない。違法の可能性なし。)」の限界の指摘ができれば良いのではないでしょうか。

というところが、結局のところ実務的な限界でありましょう。(上記のお言葉は、講義における質疑応答の中でいただいた、いわば「不意打ち」に対するご回答なので、先生の本意をゆがめて受け取っていたら、申し訳ありません。)
 以下は余談ですが、私も実務において、いわゆる「政策法務」と呼ばれるものと、自らが携わる「法制執務」の間に横たわる深い渓谷を日々実感している訳で、気持ちは向こうの断崖に向きながらも足下に旧来のくびきを感じている状況であります。
 「政策法務」は「法制執務」が単純に発展したものではなく、そもそもその性格に違いがあるのではないか、とは既に述べたとおりですが、そうは言っても「法務担当」として「『政策法務』なんだからなんとかしろ。」という理不尽な言われぶりに対処せざるを得ない状況というのは、自治体で多々あるとお察しするわけで(「文書課」を「政策法務課」に名前だけ変えたり、総務担当部から企画担当部に所管だけを変えたりすることにあまり意味はないよね、というのは別の話ですが)。
 しかしながら、そのような現況において、法制執務担当課が「『政策法務』って、よくわかんないよね。『法制執務』的には、アレだよね。」という部分に発想がとどまることは避けたい。(りょんさんのコメントがそう読めるという訳ではないので誤解しないでくださいね。私自身の心構えとしての話です。)
 旧来の「法制執務」と理論としての「政策法務」の断絶を実務で埋めていくことが、現在の私たちの責務ではないか、というのは、以前掲載したとおりですが、上記の意味で、法制執務担当は、(職務としての限界は自覚しながらも)気後れせずに「政策法務」論にたずさわっていくべき、と自分に言い聞かせているわけです。そのモチベーションから、振り落とされそうに感じる中かじりつくように、先端の「政策法務」論を吸収していきたいな、と。
 そして、法制執務担当課が担当課における政策法務を推進する手助けをするために、情報の提供や信頼関係の構築を行い、過日記載しましたところの法体系のロードマップの提示による問題解決方法の動機付けなど実施していきたい。いや、全然力不足ですが。
 なお、「現課」「政策法務担当」「法規担当」の3者の関わり方については、第一法規が「e-Reiki CLUB」として運営するサービスで提供される「自治体法務NAVI」創刊号で、そうそうたる方々(北村喜宣教授、鈴木庸夫教授、磯崎初仁教授、山口道昭教授)が「政策法務の最前線」という座談会において述べられている内容が興味深い。