自治体法務の備忘録

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行政財産と補助金の取扱いについて

 出入りしている法令関係の業者さんから「よその自治体でよく聞かれているのですが、kei-zuさんのお考えはいかがでしょうか」と照会をうけました。

 聞くなよ、ですが、私見でありますが、とお断りした上で、以下のようにご回答いたしました。

 前者については、処分であり、教示の対象となると思うが、なぜ対象外と考えるかわからない。処分性のない「契約行為」であるという考えなのか?地方自治法で、行政財産と公の施設に係る不服申立ての規定があり、処分性は明白であると思うが。
 後者については、給付行政における行政契約の一形態として考えられるものの、補助金の対象が特定のものである場合においては、要綱を「内部的な事務取扱手順」を定めたものとする説明もできようが、市民一般を念頭に置いた規定であるのであれば、処分性を否定するのは、今のご時世では難しいのではないか。要綱が告示されている場合においては、まして、処分としての性格が強いものであろう。実際に訴訟の場では、「補助金」だから、という統一的な取扱いではなく、その目的や内容によって事例ごとに(処分性の有無は)判断されると思われるが。

私「それで、他の自治体の皆さんは、どのような取扱いの傾向なのですか?」
業者さん「教示の対象とはされないところが多いようです。」
私「え゛」
 第一法規の「地方公共団体 行政不服審査の実務裁決例集」には、東京都の店舗改造資金不貸付決定に対する不服申立てについて、私法上の利息付消費貸借とかわらず処分ではないとして却下処分とした裁決例が記載されていますが、批判的な学説及び判例も併記されているので、注意が必要です。
 なお、このたびの行政事件訴訟法について、一番わかりやすく記載されていると思われる

解説 改正行政事件訴訟法

解説 改正行政事件訴訟法

の89ページにもこのことについては記載があります。
 参考のため、要綱を根拠とした助成に処分性を認めた判決の抜粋を掲載しましょう。

【昭和54年7月30日大阪高等裁判所判決】
 各地方公共団体が、その選択した具体的施策を実施するに当り、必ずしもこれを条例・規則化する義務はないとしても、一旦、地方公共団体が同法の掲げる同和対策の実施としての具体的施策を、たとえ要綱(それが被控訴人主張の通り、長の事務執行権限に基づくものとしても)によってではあれ、対象地域の住民に対し宣明しこれを制度化したときは、同制度は、同対法に基づく制度として機能し、且つ機能さすべきものと解するのが相当である。
(中略)
 よって、本件給付制度における本件要綱に基づく申請は、これを行訴法3条5項にいう法令に基づく申請と解すべきであり、これに対する被控訴人の応答は処分性を有するものと認められる。