自治体法務の備忘録

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「白いものを黒って言い切る技術」なのか

 六角潤さんのpropos(http://propos.s27.xrea.com/)で紹介されていた2ch「法令審査担当職員が語らうスレ(http://society3.2ch.net/test/read.cgi/koumu/1084787616/)」ちっともスレが伸びませんが(笑)

困ったから相談しに来てくれるのは、仕方ないのですが中には、こういうのを「政策法務」だと思っている人がいて、何だかなあ、って思います。
政策法務」=「白いものを黒って言い切る技術」みたいな。

に激しく同意される方は多いと思われ(w
 鈴木庸夫教授がおっしゃるように、法令の解釈は、政策法務の手段の一つではあるわけですが、「『政策法務』なんだから、なんとかしろ」という無茶ないいぶりに翻弄されたことは、自治体の法務担当でいらっしゃれば、皆さんご経験されていることであって、そのような無茶な言いぶりに対処できるように、自治体法務担当者として携わるべき「政策法務」のあり方を構築することが、今の私たちの急務でありましょう。
 とはいえ、法解釈の現場では、実際「白黒」の色の付け方が問題になることが多い。やっぱり業者さんは、その辺が巧みで、以前ご紹介した、成人図書の自動販売機にカメラを取り付けて「対面販売」と言い張る事例等があるわけで、市民の利益を守るために、行政が無理にでも「解釈」しなければいけない場面は、確かにあろうかと。公務員が法の遵守を行うことは当然ではありますが、ストレートだけではない、カーブやシュートを場面によって投げていかなければいけないのは、時代の要請として、確かにあるでしょう。
 では、話は戻って、法制執務担当として、どこまでそれに踏み込めるか。
 以前、りょんさんのコメントに「『政策』のオルタナティブな提示が法制執務担当における政策法務の可能性である」と書きながら、矛盾するようですが、本来的には、法制執務担当の事案への関わりは、冷静な立場として、原課に対して「戦略法務(解釈上の冒険をする。違法の可能性あり。)」と「企画法務(解釈上の冒険をしない。違法の可能性なし。)」の限界の指摘にとどめたい。
 「積極的な解釈」を行う立場が、サッカーで言えば、ゴールを狙うストライカーでるあるなら、法制執務担当の立場は、やはり、1点も取らせないゴールキーパーであろうと。ゴールキーパーが積極的にボールを蹴りに行っては、やはり危険な気がします。
 なんだか、逃げているような記述で誤解を招くかもしれないので補足しますが、「政策法務」が「動機」であり「行動」であるところ、その全庁的な取り組みに当たっては、法制執務担当のみが対外的に背負える問題ではないと思うわけです。自治体の法務遂行能力は、担当課においても発揮されるべきでありましょう。
 では、法制執務担当は、事案から客観的な立場で日和見を決め込むのか、というと、そんなことはなくて、担当課がその実力を発揮することができるように、情報の提供を行い、信頼関係を築くことが必要だと思うわけです。「『政策』のオルタナティブな提示が法制執務担当における政策法務の可能性である」とは、そのような意味であるとお受け止めいただきたい。そしてそれを実現するためには、情報収集に努め、知識を蓄積し、理解力を深める不断の努力が必要です。
 以前、自治基本条例の立案について、ベテランの法制執務担当が夜中に机で号泣したというような話をご紹介しましたが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20041229#p2)、地方分権の最前線で政策法務の名の下に何が起こってるかを見極めながら、自治体法務を私たちの手に取り戻すことが、これからの法制執務担当の役割でしょう。
 もちろん、「取り戻す」と言っても「奪い返す」わけではありません。市民協働などの新しい概念を含んだ新しい形の「自治体法務」を構築していくと言うことです。
 向かい風と思うから辛くても、未開の海原へ海路を進める舳先に立つと思えば、全身に受ける風は、未知を切り開く実感と喜びになりましょう。全国の法制執務担当のみなさま、頑張っていきましょう。