自治体法務の備忘録

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指定管理者候補の「選定」は行政処分か否か

 指定管理者の指定に当たっては、議会の「指定」受けるための前段階として複数の申請者から1つに絞り込む作業が必要で、その方法については、多くの自治体で「選定」方式が採られているわけですが、この「選定」は行政処分か否か。
 指定管理者の「指定」については、行政処分であり、何らかの理由があってこれを取り消す場合には、不服申立て及び取消訴訟の対象となりますが、「選定」により漏れたものは、これらの救済手段の対象となるのか。
 この点について、総務省は否定的なようです。

「指定をされなかったことが不服申立ての対象となるのかというご質問をいただいておりますが、公募をして、そしてあるところを指定して、他を指定しなかったということについては、処分性はないと私どもは考えております。不許可というようなことではないわけです。」
吉川浩民総務省自治行政局行政課理事官「自治体法務NAVI vol.3 22頁<パネルディスカッション「指定管理者制度」-第2回政策法務担当者全国セミナーより->」

 このことについて、次のような意見があります。

選定を行った後に、選定結果を応募者に通知することが必要になろう。この際に、通知の法的な性格が問題となる。ひとつは、応募・選定は、事実上の行為で、その選定結果に基づいて、議会の承認を得て、「指定」という行政処分を行うという構成が考えられる。また、2つ目として、応募を「指定」を得るための申請ととらえれば、申請に対する処分として、選から漏れた場合の通知を処分とする余地もある。
 前者の考え方を採ると、応募をし、選から漏れた者は、指定後に指定処分自体を争う余地があるが、応募を事実行為と構成しており、原告適格に問題があるといえる。
(中略)
自治体で選定を行った段階で、通知をする際に、その通知自体に処分性を認め、不服を申し立てる余地を残すことが行政手続の観点からも妥当であると思われる。
かながわ政策法務研究会「自治体法務NAVI vol.3 14頁<公共施設への指定管理者制度導入に伴う課題と今後の方向性について>」

 京都市では、「京都市公の施設の指定管理者の指定の手続等に関する条例(http://www.city.kyoto.jp/somu/bunsyo/REISYS/reiki_honbun/k1021129001.html)」において、次のように「選定しないこと」について、処分性を明確にしています。

(指定候補者の選定)
第4条 市長等は,前条第1項の規定による申請があったときは,次に掲げる基準に照らして審査したうえ,指定管理者の候補となる団体(以下「指定候補者」という。)を選定するものとする。
(1) 指定施設の利用に関し不当な差別的取扱いが行われるおそれがないこと。
(2) 指定施設の設置の目的に照らしその管理を効率的かつ効果的に行うことができるものであること。
(3) 指定施設の管理を適確に遂行するに足りる人的構成及び財産的基礎を有するものであること。
2 市長等は,前項の規定による選定と同時に,申請団体のうち指定候補者以外の団体(以下「非選定者」という。)を指定管理者に指定しない旨の処分をしなければならない。
3 市長等は,第1項の規定により指定候補者を選定した後,法第244条の2第6項の規定による市会の議決を経るまでの間に,当該指定候補者を指定管理者に指定することが著しく不適当と認められる事情が生じたときは,当該指定候補者を指定管理者に指定しない旨の処分をし,非選定者の中から指定候補者を選定することができる。
4 前項の場合において,市長等は,同項の規定による選定前に,指定候補者に選定しようとする非選定者に対する第2項の処分を取り消すものとする。

 「〜旨の処分をする」とは、あまり目にすることがない規定ぶりですが当該行政行為の「処分」性を明確にしたものであるのでしょう。
 また、千葉県浦安市では、条例の条文中に明記はありませんが「浦安市公の施設に係る指定管理者の指定の手続等に関する条例施行規則」(例規集のトップはhttp://sv2.city.urayasu.chiba.jp/reiki/reiki.html)において、「指定」後に選に漏れた者に対して発する「浦安市公の施設指定管理者不指定通知書」上に「教示 この処分に不服があるときは、この処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、市長に対し行政不服審査法による異議申立てをすることができます。」の記載があることから、「指定」に際して「選定しないこと」の処分性を認めようとする意図のようです。
 いずれにせよ、法の制定時に意図しなかったところで、事業者の救済の範囲を広げようとする試みは、政策法務的に興味があるところであります。