「により」か「に基づき」か
条例案について、以下の内容で作成したところ、法制執務の大ベテランでいらっしゃる以前の上司にご指摘いただく。
(趣旨)
第1条 この条例は、○○法(昭和○○年法律第○○号)第○条第○項の規定に基づき〜
曰く「うちの自治体の例規では『の規定に基づき』ではなく『の規定により』を使用するべきである。」
この点、代表的な参考書には、以下のように記載があります。
- 作者: 石毛正純
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法令の根拠を示す場合には、「に基づき」は条例・規則の第1条の趣旨規定等の中でその根拠を強調して示すときに用い、「により」は個々の条文の中で個別具体的な根拠規定を示すときに用いる。
(585頁)
上記の内容は、もちろん旧上司はご存じであって、当市における法制執務の姿勢というかクセをご指摘されたわけです。実は、私もその事情は知っていたわけで、当初案は「の規定により」で記述していたところ、最後の最後で「の規定に基づき」に直してしまいました。
というのは、国から条例の準則が流れて来た時代においては、個々の自治体ごとに取扱いに多少のクセがあったことは否定しないのですが、インターネットで全国の条例の比較が可能で、自治体が条例をもってその姿勢を内外に示すことが必要とされる現状においては、少なくとも「意図的な『誤用』」に意味はあまり無いであろう、と考えたことによります*1。もちろん、先人の業績を否定するものではなく、時代の趨勢による考え方の変化と受け止めて頂きたいのですが。
「自治体が条例をもってその姿勢を内外に示す」という政策法務論的な実践には厳密な法制執務の知識が必要だ、というのも面白いですが、上記のような法制執務の取り扱いについては政策法務論的な取り組みである、といえないこともないでしょう。*2