自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

営業目的のための閲覧制度の拒否について

 住民基本台帳の大量閲覧に対する制限に関して、自治体が立法の目的を解釈することにより対処した事例につきましては先般掲載しましたが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050610#p1)、類似の事例について、以下のとおりご紹介しておきましょう。

【照会】 標記のことについて左記のとおり疑義がありますので、至急ご教示ください。
      記
 建築基準法第93条の2に規定する確認の申請書に関する図書の閲覧の制度は、建築主事に提出された当該図書を閲覧の用に供し周辺住民の協力のもとに違反建築を未然に防止するとともに併せて無確認建築物の売買等をも防止しようとするものである。したがって、これらの点について利害関係を有しない者が本制度の趣旨を逸脱してあきらかに営業の目的のために当該図書の閲覧を請求する場合においては、当該請求を拒否しても違法ではないと解するがいかん。
【回答】 貴見のとおりである。
※昭和50年7月25日 住指発第1126号(建設省

 建築基準法の該当条項は以下のとおりです。

建築基準法
(書類の閲覧)
第93条の2 特定行政庁は、確認その他の建築基準法令の規定による処分に関する書類のうち、当該処分に係る建築物又はその計画が建築基準関係規定に適合するものであることを表示している書類であつて国土交通省令で定めるものについては、国土交通省令で定めるところにより、閲覧の請求があつた場合には、これを閲覧させなければならない。

 なお、厳密にいうと本条は平成10年(法律第100号)に全部改正されているので、照会時点の昭和45年制定(法律第109号)の内容は、以下のとおりです。

(確認の申請書に関する図書の閲覧)
第93条の2 特定行政庁は、確認の申請書に関する図書のうち、当該確認の申請に係る計画が建築物の敷地に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることを表示している図書であつて建設省令で定めるものについては、建設省令で定めるところにより、閲覧の請求があつた場合には、これを閲覧させなければならない。

 おもしろいのは、住民基本台帳法においては第11条第3項において「市町村長は、(中略)当該請求を拒むに足りる相当な理由があると認めるときは、当該請求を拒むことができる。」と閲覧拒否を規定しているところ、建築基準法第93条の2においては閲覧拒否は特に規定されていない。それであっても、立法の目的の解釈により閲覧拒否を可能とみていることです。
 もちろん、上記の建設省通知は、国(省庁)としての解釈であって司法の判断によるものではないので、自治体の法解釈を縛るものでないことは言うまでもありません。しかしながら、個別法の解釈が省庁の見解に独占されず「自治体として」各法令における横断的な個人情報保護への取り組みに対する判断を行うに当たってのよりどころの一つにはなるのではないでしょうか。