自治体法務の備忘録

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「法令審査委員会」やら「法令審議委員会」やら

 亀レスなのですが

 この委員会に関する規程を読む限りは、重要な条例案などに対する法令審査を行政内部だけで行っていることがわかります。しかし、ホントは、ここで行われるような議論こそが、本議会や議会委員会でなされるよう求められつつあるのではないかなぁーなんて思ったりなんかして。
http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/20050623/p2

 id:joho_triangleさんはご承知のことと思いますが、このblogもいろいろなお立場の方がご覧になることが考えられますので整理しておきますね。
 私が先般「逐条形式で説明が行われることは少なからずあるのではないでは(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050622/p4)」と記述した「委員会」は、地方自治法に規定されるところの「常任委員会」であるわけで。

常任委員会
第109条 普通地方公共団体の議会は、条例で常任委員会を置くことができる。
2 議員は、それぞれ一箇の常任委員となるものとし、常任委員は、会期の始めに議会において選任し、条例に特別の定がある場合を除く外、議員の任期中在任する。
3 常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する。
4 常任委員会は、予算その他重要な議案、陳情等について公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる。
5 常任委員会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。
6 常任委員会は、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。

 ご指摘のとおり、法令審査のための「法令審査委員会」やら「法令審議委員会」は、自治体の行政内部で行われているわけですが、その運営というのは、「政策も含めた議論」と言うよりは「『条例』『規則』に関する審査」でして、関係法令との整合性はもちろん議論されますが、どちらかというと字句や用語のチェックが多いのですよ。
 うちの自治体では読み合わせを行うのですが、たまたま手元にある平成16年北海道条例第98号を例にとると「ほっかいどうじょうれいだいなんごう。しちょうそんのはいちぶんごうにともなうかんけいじょうれいのせいりにかんするじょうれい。みだし、かっこ、ほっかいどうかんきょうせいかつぶのじむしょりのとくれいにかんするじょうれいのいちぶかいせい、かっことじ。だいいちじょう、ほっかいどうかんきょうせいかつぶのじむしょりのとくれいにかんするじょうれい、かっこ、へいせいじゅうにねんほっかいどうじょうれいだいろくごう、かっことじ、のいちぶをつぎのようにかいせいする、まる。べっぴょうだいさんちゅう、かぎかっこ、○○まち、××まち、かぎかっことじ、を、かぎかっこ、○○まち、かぎかっことじ、にあらためる、まる。みだし、かっこ〜」というぐあいにつづく、失礼、具合に続く訳なのです。*1

 重要条例案の審査であれば、需要はあると思いますが、議事録を公開したり、傍聴を認めたりしているトコロは、おそらく皆無なのでしょうねぇ。

 ないでしょうね。でも、「なんで『又は』でなくて『及び』なんじゃいゴルァ」というやりとりが主なものでは、あまりご興味も引けぬかも。もっとも、自治体によっては運営の内容は異なるかもしれませんが。
 しかしながら、このことについて、まさしくid:joho_triangleさんがご指摘されるように、「立法過程のスパイラル」の中での「議論」が欠如している側面なのでしょうね。
 なお、横須賀市においては、この種の委員会が形骸化しているものとして、これに代えて「政策法務委員会」を置いて、政策的な議論を行おうとしています。そのような性格の委員会であれば、市民の参加を担保するために議事録の公開や傍聴も意味があるものかもしれません。
 とはいえ、この「政策法務委員会」も「立法過程のスパイラル」の中で行政が緻密に条例案を作り上げる過程とは言えるわけです。
 この「行政が緻密に条例案を作り上げ」てしまうことへの批判については、内閣法制局の存在が各省庁の立法の障害になっているという議論を思い起こさせますが、法の議員提案が普通であるアメリカでは司法の場で法が憲法違反だと判断されることが(日本と比べて)多いことも頭をよぎります。
 議員が適正な立法を実現するための手段としては議会の法制スタッフの充実が検討できるとはいえ、果たして議会の法制スタッフが法の適合性をもって議員を説得することができるのか。
 以前に「福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例」における財産権の侵害の問題について掲載したことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050107#p1)、同条例は議員提案だったと思う。
 個別の違法性は司法で判断されるべきであり、司法の場を適正に運用するためにも積極的な立法が行われてしかるべきという議論もできますが、一方の「法治主義における法の信頼性」の問題を考慮すると難しいところです。
 うーん。現在は直感的な物言いしかできなくてすいません。

*1:「○○町」「××町」は正式な名称なのですが、読み仮名がわからなかったので○×でお茶を濁しています(^^;