自治体法務の備忘録

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建築審が「違法」裁決

中野区内で建設中の地上8階地下1階建てのマンションをめぐり、付近住民が「建築は違法」として区建築審査会に審査請求し、審査会は建築確認を取り消す裁決をしたことがわかった。
http://mytown.asahi.com/tokyo/news01.asp?kiji=4070

 建築審査会においては、取消をも前提に、実質的に踏み込んだ審査が行われたということなのでしょうね。
 このこと自体は、最近の最高裁判決(平成17年06月24日 第二小法廷)を受けて適切な処置だとは思います。

 したがって,指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は,指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たるというべきであって,抗告人は,本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たるということができる。
http://courtdomino2.courts.go.jp/schanrei.nsf/VM2/58C97D30C7507D0C4925702F00476D6C?OPENDOCUMENT

 問題は「同社によると、これまで同区内では、同様の手法で、同社も含め10件ほどのマンション建築が許可されてきたという。」という点でしょうね。
 このことについては、むしろ指定確認検査機関について監督権限があるところの東京都の責任であるわけだと思うのですが

都建築企画課は「以前は他の自治体でも、同様の手法で建築を許可していたが、最近は審査会の判断が厳しくなった。(中野区の手法は)本来の条例の趣旨からすればおかしい。条例を守って頂きたい」としている。

という言いぶりには、都の担当者を小1時間(ry
 というより、そもそも法の仕組みに欠陥があるのではないかとも思うのですが。
 上記の最高裁判決に係る事例の建築審査会における経緯は、横浜市のサイトにアップされています(http://www.city.yokohama.jp/me/machi/kenkan/chousa/houkoku/13-14kentiku/nakaku14-2.pdf)。この判決について、国の意向は以下のようなものです。

 国土交通省最高裁決定を受け、市を支援する方針を固めた。東京建築検査機構に対して、市の裁判に協力するよう指導する。「特定行政庁も指定権者と連携すれば、現行法の範囲内でも著しい不都合は起こらない」
※「日経アーキテクト(2005年8月8日号)」37ページ

 ほうほう。問題は以下の部分。

 今後の判決で、仮に賠償命令が下った場合、市は国家賠償法に基づき指定機関に求償することも考えている。国交省は、「市からの求償に応じるように国が指定機関を指導する。応じないときは確認能力がないとみなして処分する」
※同誌

 そこに「法」はあるのかい。