自治体法務の備忘録

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従うべきか従わざるべきか

 id:joho_triangleさんが条例と司法の関係について詳細に検討されている内容(http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/20051217/p3)を念頭に、id:nationfreeさんが掲載された記事(http://d.hatena.ne.jp/nationfree/20051216/p1)で言及された自治体における準則の取り扱いについて

川崎市介護保険条例施行規則】<介護保険利用者負担額減額・免除認定証(別記様式第24号)裏面>
 注意事項
一〜四 (略)
五 不正にこの証を使用した者は、刑法により詐欺罪として懲役の処分を受けます。

 「懲役の処分」って言い切っているのは、さすがに無茶な規定振りです。凄いなあ、といってしまいそうですが、実は全国の自治体がこの例に倣っています。川崎市役所の方、ご覧になっていたら、例にあげてすいません。
 なぜこんなことになっているかというと、準則に従っているからなのですね。*1この点、検討の上、対処している自治体も存在します。

横浜市介護保険条例等施行規則】<介護保険利用者負担額減額・免除認定証(別記様式第11号)裏面>
 注意事項
1〜4 (略)
4 不正にこの証を使用した方は、刑法の規定により処罰を受ける場合があります。

 うむ、正しい。
 まあ、規則の様式における記載事項でしたら、法規範として影響は限定的ですが(イヤ、マア、エイキョウガナイコトモナイガ)、田中孝男助教授(九州大学)が以下のようにご指摘されていらっしゃる事例もあります。

 内容的に問題な条例準則として、例えば、私権の制限をする許認可制度についてはその基本的な基準は権利制限・義務賦課事項条例主義に照らし条例事項とするのが一般的な考え方(国も許認可基準を政省令に前面委任するものについてこれを法律事項にできる限り改めている)であるのに対し、許認可基準を全面的に規則に委任している屋外広告物条例準則(国土交通省)がある。また、単純なミスのある条例準則もある(2000年には条例準則に誤りがあったことによる固定資産税評価審査委員会条例の改定が行われる例が全国各地で見られた)。地方公務員法関係の条例準則第1条の多くが、その内容が「趣旨」規定に過ぎないものを、「……について定めることを目的とする」としていることも、広く知られている。*2
(29ページ)*3

 なお、年度末に全国の自治体で苦労される地方税条例の準則の取扱いについて、一部自治体では、内容の全部を年度末の首長専決処分とせず、改正内容の施行日から専決処分と次回の議会定例会上程に切り分ける等の運用も行われています。*4
 いろいろ書きましたが、もちろん、準則をあげつらうわけではなく、やはり実務においては何よりよりどころとさせていただいており、関係各位におかれては感謝、です。要は自治体に解釈し、運用できる基礎体力が求められているということでしょう。
 私自身が易きに流れやすい人間なので自戒を込めて(^^;

*1:実のところ、省令である介護保険法施行規則にも同様の記載があります。

*2:【引用者注】「目的規定」と「趣旨規定」の規定振りの違いと手法については、「市町村条例クリニック」(田島信威・著/ぎょうせい)に事例を挙げて詳しく説明されてますので、ご興味ある方はご覧ください。

*3:同書は先行事例を基にした「ベンチマーキング手法」を論じた実務の指針となるものですので、自治体の法務担当の方は是非読まれてください。

*4:これについて、税制の改正に伴う地方税法の改正において、その一部分だけ取り出しての専決がはたして妥当か、という議論もあります。