自治体法務の備忘録

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「目的規定」と「趣旨規定」

 一般的に例規の第1条に規定されるところの「目的規定」と「趣旨規定」の書きぶりについては、法制執務担当者を悩ませるところですが、「特定菓子贈与禁止法」(w)の規定ぶりについて、bewaadさんは以下のようにご説明されています。

(考え方)
見出しが「趣旨」であれば文末は「ものとする。」ですし、文末が「目的とする。」であれば見出しは「目的」となります。下敷きになっているのが個人情報保護法第1条のようですから見出しを「目的」に変えましたが、見出しを維持するのであれば「・・・を定めることにより、・・・」を「・・・を定めるものとする。」と変える必要があります。
http://bewaad.sakura.ne.jp/20060216.html

 「目的規定」と「趣旨規定」の違いについて

ワークブック法制執務 全訂

ワークブック法制執務 全訂

を見ると、以下のように記載があります。

【問29 目的規定と趣旨規定は、どのように違うのか。】
答1 通常の目的規定は、その法令の立法目的を簡潔に表現したものであり、その法令の達成しようとする目的の理解を容易ならしめるとともに、その法令の他の条文の解釈にも役立たせるという趣旨で設けられているものである。(後略)
 2 これに対して、趣旨規定は、(略)その法令で規定する事項の内容そのものを要約したものである。
(72ページ)

 さて、条例の実例批評が手厳しく非常に勉強になる

市町村条例クリニック

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では、具体的に「○○町白百合保護条例」を例にあげて以下のように説明されています。

【○○町白百合保護条例】
第1条 この条例は、白百合の保護(盗掘の防止)と増殖を図ることを目的とする。

 本条は「目的規定」としているが、もともと白百合に保護と増殖を図るということは、それ自体を目的とするというよりは、むしろより高次の目的のための手段というものである。したがって、本条は目的規定ではなく趣旨規定とすることの方がより適切である。
 本条を趣旨規定とすると、例えば次のように表現することができる。

 (趣旨)
第1条 この条例は、白百合の保護及び増殖について必要な事項を定めるものとする。

 もっとも、第1条をあくまでも目的規定としようとするならば、本条に何か高次の目的を付与することが必要であり、例えば次のような目的を付与した表現が考えられる。
 第1案

 (目的)
第1条 この条例は、白百合の保護及び増殖に関する事項を定めて、町民の自然を愛する信条の滋養に資することを目的とする。

 第2案

 (目的)
第1条 この条例は、白百合の保護及び増殖に関する事項を定め、町民の自然に親しむ気風の助長を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(79ページ)

 また、同書では、やはり例にあげられた「○○町交通公害防止条例」の第1条について、そこに記載される「○○町生活福祉環境の向上等に関する基本条例(昭和56年○○町条例第24号)に従い住民の交通安全の確保を基本とし、交通公害防止に係る施設に関し必要な事項を定め」という内容から、「本条例は前述の基本条例の実施条例であると位置づけられるものなのだから、そうなると第1条は『目的規定』ではなくて『趣旨規定』とすべき」と指摘しています(145ページ)。
 「目的規定」としてのもったいぶった書き方も政策的に要望されることがある一方で、実体的規定の規定ぶりに振り回されて第1条の規定ぶりがおろそかになりかねないのが私の経験則からありますので、法制執務のご担当者の方々におかれてはご留意ください。