自治体法務の備忘録

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続・「目的規定」と「趣旨規程」

 先日、政省令における「目的規定」と「趣旨規程」の取扱いの線引きが不明である旨を記載しましたが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060220/p2)、

法令起案マニュアル

法令起案マニュアル

には、以下の旨の記載がありました。

 目的規定とするか趣旨規定とするかは、一義的に決まるものではなく、その法令で規定する内容、規定する理由、その法令の構成などを踏まえて、どちらがより適切かという観点から決定することとなる、なお、「……を定めることを目的とする」という目的規定の形をとる例が散見されるが、目的か趣旨かどちらかにすべきであろう。
(191ページ)

 また、同書の著者でいらっしゃる大島稔彦氏は、

法制執務の基礎知識―法令理解、条例の制定・改正の基礎能力の向上

法制執務の基礎知識―法令理解、条例の制定・改正の基礎能力の向上

において、もうちょっと突っ込んで以下のように記載されています。

 一般的には、目的規定を置く法令の方が多い。まれに、「……を定めることを目的とする」といった表現で、見出しを「(目的)」とする例が見られるが、これは誤りに近い。本来は趣旨規定にすべきだろう。
(99ページ)

 では、政省令の第1条において、「趣旨規定」に過ぎないものを「目的規定」として規定することは不適切であるのかと疑問が浮かびますが、この点については、以下の記述がヒントになります。

法律においては目的規定やその法律の内容を簡潔に要約した趣旨規定を置くのが通例であるが、政令、省令などの国の命令については、目的規定や趣旨規定が置かれることは例外である。というのは、これらの国の命令は法律の委任に基づくか、あるいは法律を実施するためのものが認められているだけだからである。
「立法技術入門講座2 法令の仕組みと作り方」田島信威・著(ぎょうせい)194ページ

 つまりは、政省令においては、「目的規定」と「趣旨規定」のデリケートな線引きは行われていないのではないかと。というより、同書において上記の文章に続けて記載されるところの

 しかし、自治立法たる地方公共団体の条例や規則については、それが一つのまとまった体系的な内容を持ち、住民の権利義務に影響があると考えられるような場合(たとえば行政事務条例など)においては、目的規定や趣旨規定が置かれるのが通例である。なお、条例や規則の場合には法律の規定に基づく委任条例・委任規則においても目的規定や趣旨規定が置かれることが多く、国の法令の場合とはやや異なった様相を呈している。
(194ページ)

という点から、むしろ、自治体の例規の方が法令に比べたときにイレギュラーな取扱いをしていると言えるかもしれません。
 先般引用させていただいた田中先生がご指摘は、自治例規の「特殊性」に即しない準則の規定ぶりに対してというよりも、示された準則を自治体においていかに運用すべきかという、自治体職員への呼びかけでありましょう。
 さて、先般の記事においても掲載した事項でありますが、

 目的規定は、簡にして要を得た表現を要求され、立案技術上もなかなか難しいものの一つとされているが、立案者の意図が集中的に表現されたものが目的規定なのであり、したがって、目的規定は、単なる美辞麗句であってはならない。
(71ページ)

条例規則の読み方・つくり方―市町村の実例を中心として

条例規則の読み方・つくり方―市町村の実例を中心として

 耳に痛いなあ(^^;