自治体法務の備忘録

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「金田一さん!出番です」

 狭山市立博物館で行われている「金田一さん!出番です」(http://www.city.sayama.saitama.jp/kakuka/kyoiku/museum/kikakuten/h18spring/index2.htm)に行って来ました。
 今日は、30年前の大ブームの際に角川文庫で90点以上の表紙を手がけた杉本一文氏のサイン会と作者である横溝正史氏のご子息でいらっしゃる横溝亮一氏の講演会があり、非常に賑わっていました。
 杉本氏のイラスト原画にうっとり見とれながらも、中学校の頃、裸体の女性が多くかかれた表紙の本を本屋のレジに持っていくのが気恥ずかしかったことを思い出しました。サイン会は、氏が表紙を書かれた文庫本をお持ちください、というものでありまして、当然、全国からその道の「鬼」が集まるわけです。「何持ってきたの?」と私が同行した知人に聞くと
知人「イラスト版の『悪霊島』上下です」*1
私「ほほう、それはなかなか」
知人「そういうkei-zuさんは?」
私「『真珠郎』と『鬼火』」*2
知人「良いセンですね」
 こうなると、他の人の本が気になって仕方がない。
私「ほら、あの人、『イヌガミ』と『テマリ』だよ」*3
知人「うんうん、王道も良いですな。でも、せっかくだから図録ぐらい販売すればよいのに」
私「2、3千円だったら、買っちゃうよねえ」
 みんな濃すぎます。
 横溝氏の講演は、随筆にも記されていないお話が聞けて興味深いものでした。とりわけ「父と子」の関係など、息子を持つ我が身に、自分と父の関係にも照らし、染み入ります

 戦争中、上空でねえ、B29と日本の戦闘機がバリバリバリッと、やってる、それがもう、すごい音なわけですよ。すると親父がねえ、防空壕から私を引っ張り出して、部屋の蓄音機でベートーベンの「田園」を大音量でかけるんです。戦闘機に負けないぐらいの音で最初っから終わりまでかける。私は最初は恐かったけど、もう、必死で聞いてね。聞き終わる頃には、戦闘機の音がしなくなってる。で、親父が言うんです。「どうだ、音楽を聴いている間は、戦争の音は聞こえなかっただろう」

 本を買ってくれるとき、たくさん買ってくれる。あれもこれもと私や姉に、20冊ずつ位、買ってくれるんです。

 (雑誌「新成年」の編集長をしている頃)随分とおしゃれな服をしつらえてね、これは今でも家にあるんだけれど、親父、こんな服を着ていたのか、というのがね。その頃、銀座のバーの女給が「モダンボーイ」コンテストっていうのを投票でやりまして、それに優勝した。「どうだい、俺は日本一のモダンボーイだぞ」って、自慢して、お袋はあんまり良い顔をしなかったんですが、結構、俗っぽいんだなあ、と思いました。

 親父が癌でねえ、病院に入ってるとき、最後に目をうっすらとあけてねえ、…私の手を、ぐっと握ったんです。「お前、がんばれよ」と(いう感じで)ね…(息を詰まらせる)

 ご興味ある方はお出かけください。

*1:文庫が発売されてすぐに映画化されたので、映画スチール版のものは市中に多く出回っているがイラスト版は稀少

*2:中期の耽美的趣向が強い作品。金田一探偵は出てこず、現在は絶版

*3:犬神家の一族」と「悪魔の手毬唄」のこと