自治体法務の備忘録

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経過措置の規定振り

 東京地裁の決定は、新しい法規の規定により旧制度が全廃される場合のことを想定していないために解釈を誤ったと考えるが、いかがでしょう > 我が密かに愛する法制執務マニアの皆様(笑)
http://propos.s27.xrea.com/20060713.html#p01

 えー、ご掲載の記事は私に含むところがありますかどうですか。なんつーか、目の前の仕事に息も絶え絶えだったのでお返事が遅れました。
 とはいえ、裁判の内容自体については、bewaadさんが詳細にご指摘されており(http://bewaad.com/20060714.html#p02)、ここでは、自治体法務担当者の方々の実務への参考にと、六角潤さんのボケに野暮を承知で法制執務的な突っ込みをさせていただきます。
 六角さんがご指摘のような施行日前後における当該身分を有する者に係る規定の「切断」が認められないのは、そこに明白な「立法者意思」(おおっと)が明らかであり(だって、見出しに「経過措置」って書いてあるしい)、文理上の解釈が可能であるからでしょう。
 ご承知のとおり「この法律の際現に〜を受けている○○は、〜とみなす。」という規定ぶりは経過措置において良くあるところで、自治体法務担当者のバイブル「法制執務詳解<四訂版>」の242ページ以下にもいくつか事例が列記されているところです。
 とはいえ、上記に列記されている事項は、旧法に基づき既に行われた処分や交付済の証明書の取扱いに関するもので、本事例のように新法において設置根拠が無くなる役職の取扱いについて今回のような規定ぶりを用いることの方が本当は適当ではないのかもしれません。
 ちなみに、私が毎年ひいひい言いながら(今回は特に辛かった!)書いている給与条例における給料表の切替については、誤解の無いよう、「施行日の前日において」と適用の対象を明白にしています。
 こんなことを言うと怒られてしまいますが、法律でも、附則の経過措置の規定ぶりで厳密に読んでみると心許ないものがあるのは、指定管理者の導入について私が以前に書いたとおりです。(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050506/p1)(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050509/p1)
 さて、翻って本件の東京地裁判決ですが、「立法者意図」としての保護期間の延長が認められず、12月31日と1月1日の取扱いが「切断」されたのは、判決文にあるように「保護期間は、その末日をもって終了する」のが当該法の解釈として適当であると判断されたところによるものでしょう。したがって、このたびの地方自治法改正における経過措置の規定は、当該地裁判決と矛盾するものではない。
 なお、法制執務の実際的な取扱いとしては、議会における「立法者意図」を明白にするべく、趣旨説明や質問答弁の中で明言する必要もあろうというのは、branchさんがご掲載の記事を引用して私が前回に記述したとおりです。(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060713/p6
 てな感じでいかがですか、先輩w