自治体法務の備忘録

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“東京ルール”施行で賃貸住宅の敷金相場が下落

 東京都内の平均敷金は1.67カ月分、この2年間で16%下落した――。住宅市場のマーケティングコンサルティングを手がけるアトラクターズ・ラボ(本社:千代田区)は2006年9月、1都3県にある賃貸住宅の敷金・礼金に関する調査結果をまとめた。敷金相場が変化した理由として同社は、東京都が2004年10月に施行した“東京ルール"(東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例)の影響を挙げている。
 東京ルールは、壁紙の変色や畳の摩耗といった、通常の生活によって消耗した部分の修繕費用を、入居者ではなく家主が負担することを明文化した。
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz06q3/513357/

 え?それって、条例の守備範囲なの?
 調べてみたら、同条例は、紛争防止のための宅地建物取引業者に対する義務規程を定めたもの。そうだよね、監督権者としての業者への義務づけであるわけで。
 では、記事で記載された内容はどこにどのように規定されているのか。

【東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例】
(宅地建物取引業者の説明義務)
第二条 宅地建物取引業者は、住宅の賃貸借の代理又は媒介をする場合は、当該住宅を借りようとする者に対して法第三十五条第一項の規定により行う同項各号に掲げる事項の説明に併せて、次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。
 一 退去時における住宅の損耗等の復旧並びに住宅の使用及び収益に必要な修繕に関し東京都規則(以下「規則」という。)で定める事項
 二 (略)

【東京における住宅の賃貸借に係る紛争の防止に関する条例施行規則】
(宅地建物取引業者の説明事項等)
第二条 条例第二条第一号の規則で定める事項は、次に掲げる事項とする。
 一 退去時における住宅の損耗等の復旧については、当事者間の特約がある場合又は賃借人の責めに帰すべき事由により復旧の必要が生じた場合を除き、賃貸人が行うとされていること。
 二 住宅の使用及び収益に必要な修繕については、当事者間の特約がある場合又は賃借人の責めに帰すべき事由により修繕の必要が生じた場合を除き、賃貸人が行うとされていること。
 三 当該住宅の賃貸借契約において賃借人の負担となる事項
2・3 (略)

 実際のところ、賃貸借契約の終了における敷金の取扱いについては不動産業者の意向によるところが多くあるわけで、不動産業者としては、これっきりの借り主よりもこれからもお得意さんである貸し主の意向を含んでソロバンを弾きがちなのでトラブルが多かったわけです。
 ここでは、敷金の取扱いについて規則で規定されている訳ですが、その内容は、その本来の使途を明確にしたものにすぎません。つまり、この条例は、本来あるべき運用の実効性を、限られた監督権限の中で確保しようとしたわけですね。技術論としておもしろい。