自治体法務の備忘録

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神戸市における双子の条例

 神戸市では、既存の「神戸市民の意見提出手続に関する条例」におけるパブリックコメント手続が

  • 基本構想
  • 基本的な計画
  • 義務の賦課・権利制限に係る条例案(市税等に関するものを除く)
  • 大規模建設事業

などを守備範囲としていたところ、行政手続法の改正を受け、行政手続条例を改正し、

  • 規則(処分の要件を定める告示を含む)
  • 審査基準
  • 処分基準(不利益処分の基準)
  • 行政指導指針

などを守備範囲としたパブリックコメント手続を規定したそうです。

 神戸市では,下記のとおり協働・参画の3条例の1つ「神戸市民の意見提出手続に関する条例」に基づく「意見”提出”手続」と,「神戸市行政手続条例」に基づく「意見”公募”手続」を実施しております。
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/09/031/pabukome/index.html

 パブリックコメントに関する法設計については、横須賀市や神戸市のように1本として整備するか、神戸市のように2本の条例として整備するか悩ましいものがあります。

 1本の条例として整備すれば、もちろん市民にとってわかりやすいものになろうが、それぞれに目的とするものが異なるところ、2本の条例を制定しても差し支えない。というよりも、各地方公共団体において行政手続条例の制定が求められた当時と異なって分権後の現在においては、意見公募手続条例のほかにも自治基本条例や市民協働条例など、制度の設計についてはさまざまな手法が想定されるものであり、地方公共団体の創意工夫が求められていると言って良い。

 上記は、昨年の7月に開催された自治振興セミナーで論じられた内容に関する私のメモ(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060725/p1)ですが、個人的には、「条例」「計画」等を対象としたパブリックコメントと「規則」「審査基準」等を対象としたパブリックコメントは、その性格に違いが生じうるではないか、と思うところです。
 「条例」「計画」等に対するパブリックコメントを市民参加の手段の一つとして整備するのであれば、その対象が市民に限定されうる一方で、「規則」「審査基準」等に対するパブリックコメントの趣旨を行政手続法に準じるとすれば、その対象は市民に限定されるべきではありません。
 なお、1本化している横須賀市の条例では、規定上は対象を「市民」に限定していますが、実務では市民以外の者も取り扱っている旨を上記のセミナーで伺いました。どうにも難しいですね。
 とはいえ、私の前述の意見に対し、「自治体はその規模に違いもあり、当初はその『身の丈』に応じた制度を開始し、一定時期ごとに見直しを進める運用を探るべきではないか」とのご指摘を庁外の方にいただき、なるほどなと思ったのも事実であって、つまりは、それぞれの自治体において、その政策運営を念頭に置いた上での法設計が検討されるべきであるわけなのでしょう。
 それにしても、神戸市における「意見”提出”手続」と「意見”公募”手続」って名称は、随分とややこしいですな。