自治体法務の備忘録

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資源ゴミに係る公有権

 tihoujitiさんがご紹介されていた(http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20070319#p1)「地方自治職員研修」における兼子仁先生のご講演内容を読みました。

 公有説では、廃棄物処理法に基づき所定の場所に排出された廃棄物は、住民が所有権放棄して無主物になったものを自治体が代理占有しているので、これを勝手に持ち去れば公有財産権侵害になるという解釈である。しかし、この場合は自治体の代理占有とはいえず、無主の動産は占有の意思をもって占有する者に所有権が移転する。しかも、ごみ集積所を自治体が積極的に指定しているところはほとんどない。
地方自治職員研修」07年4月号(公職研)77頁

 集積所に置かれた資源ゴミについての、兼子先生の無主物占有の理論については、以前に私もご講義で伺ったことがあり、拙blogを始めたばかりの頃(わあ、もう2年も前か。)にご紹介したことがあります。(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050105/p1
 資源ゴミの持ち去り禁止条例については「自治体法務研究」誌でも特集されており、(株)ダイナックス都市環境研究所所長の山本耕平氏が以下のようにご指摘されています。

 持ち去り行為を法律で規制できるかどうかは、微妙なところである。集団回収のように、民間団体と回収業者が契約によって回収を行っているような場合は、古紙の売買をしているわけだから、これを勝手に持ち去れば窃盗罪になる。しかし自治体のごみステーションに出された場合は、廃棄する目的で出されたとみなされ、所有者のいないものとなって即座に窃盗罪を問うのは難しい。
(略)
 分別収集でステーションに古紙を排出することを目的とした行為ではなく、行政の要請に従って住民が古紙を行政に譲渡する行為だと言うこともできる。
(略)
 しかしステーションに出された古紙を「行政の管理下にある」とみなすことには自治体の反対がある。
自治体法務研究」05年冬号(ぎょうせい)46〜47頁

 集積所の資源ゴミについて自治体の管理下にあることを明確にするものとして、joho_triangleさんは

ゴミの所有権を自治体に帰属させる方法については,たとえば,指定ゴミ袋を利用することによって,当該指定ゴミ袋に「この指定ゴミ袋の使用者と市は,その使用条件(ex.分別等に関する条件)を遵守して,指定収集所に出した廃棄物については,市の所有物とする旨を合意する」といった,いわゆる約款(らしきもの)を示しておくという案は,,,どうかなぁー。
http://d.hatena.ne.jp/joho_triangle/20070321/p2

とご指摘されており、いやまあ、そりゃ法構成上は可能ですわな。でも、自治体はそこまでやらんでしょう、ということです。
 自治体が排出された資源ゴミを自らの管理下あることを明白にした場合において、はたして自治体がどこまで責任をとれるのか、と問いかける事例として、上記のそれぞれの記事において、兼子先生は「公道上の資源ゴミ散乱がもとで交通事故が起こった場合」を、山本氏は「ステーションに出された古紙が放火された場合」をあげられており、また、私も前述の記事で

このような条例が制定されれば、役所が「うちは収集場所に置かれたゴミを拾っていくだけですから」という「言い訳」をすることは通用しなくなるのではないか、と言うことです。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20050512/p1

と指摘させていただいております。