自治体法務の備忘録

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個人情報の保護と公文書の保存

 社会保険庁に移管後国民年金台帳を廃棄した自治体に関する報道(http://www.asahi.com/life/update/0705/TKY200707040469.html)についてbranchさんがご掲載の記事から

 正直、大多数の市町村がまだ被保険者名簿を保存していたという事実に驚いている。また、この記事自体は中立的な書きぶりであるものの、本件に関する記述をいろいろと眺めていると、保存している市町村がえらくて廃棄した市町村がけしからんというようなニュアンスを帯びたものが散見されて、おいおい、と思っている。
 というのも、被保険者名簿はまさに個人情報の塊であるところ、行政機関等個人情報保護法では 「行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。」(第3条第1項)、「行政機関は、前項の規定により特定された利用の目的(以下「利用目的」という。)の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を保有してはならない。」(同条第2項)と、「行政事務の遂行上必要な範囲で個人情報を保有する」ことを大原則としており、多くの地方公共団体の個人情報保護条例も同様の考え方を採っているものと考えられる(例として、千代田区個人情報保護条例第6条「実施機関は、個人情報を収集するときは、当該個人情報を取り扱う業務の目的を明確にし、当該業務の目的を達成するために必要な最小限の範囲内で、適法かつ公正な手段によって行わなければならない。」 )ところである。
 とすれば、なぜ大多数の市町村がなおも被保険者名簿を保存しているのか。機関委任事務の廃止により関係事務が社会保険事務所に移管されたことで個人情報保有の基礎となる行政事務がなくなったわけだから、その時点で廃棄するか、あるいは保存する必要性があったとしても事務本体に附属して市町村から社会保険事務所に移管するべきだったのではないか。
http://www.seri.sakura.ne.jp/~branch/diary0707.shtml#0705

 社会保険庁が本来担うべき責務が基礎自治体に転嫁されないことを祈るばかり。