自治体法務の備忘録

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「療育手帳」の根拠と規定ぶり

 後輩(女性)が、規則案の中で次のような規定ぶりを持ってきました。

身体障害者福祉法(昭和24年法律第二百八十三号)第15条に規定する身体障害者手帳精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)第45条に規定する精神障害者保健福祉手帳又は療育手帳制度要綱(昭和48年厚生省発児第156号)に規定する療育手帳

私「前半はともかく、自治立法たる『規則』で国の通知を引用するのはどうかな」
 前半を整理の上、後半についてはこう書いては、と渡したのが以下の内容です。

療育手帳知的障害者の福祉の増進を図るため、児童相談所又は知的障害者福祉法第12条の規定による知的障害者更生相談所において知的障害者と判定された者に対し都道府県知事又は地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項に規定する指定都市の長から交付される手帳で、障害の程度その他の事項の記載があるものをいう。)

後輩(女性)「なんだかわかりにくいですぅ」(そういう風に話す人なのです)
私「身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳と違って、法律に根拠がないから、迂遠な言い回しになるのはしょうがないね」
後輩(女性)「よその自治体は書いているところがありますよぅ」
私「分権前は自治体の首長は『機関』として国の『子分』だったから、都道府県知事は療育手帳を発行するに当たって国からの通知を根拠にできたのだろうけど、分権後は局長通知は直接には発行の根拠にならないはずだよね」
後輩(女性)「機関委任事務って、今考えると根拠が曖昧だったんですねぇ」
私「機関委任事務が廃止された現在では、形式的には都道府県知事が自主的に発行しているものということになるのかな」
後輩(女性)「自治事務だったら、都道府県でせめて規則を制定して欲しいですぅ」
私「法定じゃないから、自治体によっては名称も違うんだよ。東京都は『愛の手帳』って言うんだから」
 その東京都では、交付の根拠が「東京都愛の手帳交付要綱」のようです(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/faq/techo_qa/taishou/index.html)が、京都府は「規則」の形式を定めています。

療育手帳の交付に関する規則】
 (趣旨)
第1条 この規則は、療育手帳制度について」(昭和48年9月27日付け厚生省発児第156号厚生事務次官通知。以下「次官通知」という。)に基づき、知的障害者及び知的障害児に対して一貫した指導及び相談を行うとともに、国、地方公共団体等が実施する援助措置を受けやすくするために交付する療育手帳(以下「手帳」という。)に関し、必要な事項を定めるものとする。
http://www.pref.kyoto.jp/reiki/reiki_honbun/aa30013051.html

 あらら、事務次官通知を引用しているなあ。
 先の東京都でも「愛の手帳」を記載している例規では、

【東京都障害者スポーツセンター条例】
 (利用することができる者)
第七条 スポーツセンターの施設を利用することができる者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
 一 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号。以下「法」という。)第十五条第四項の規定により身体障害者手帳の交付を受けた者
 二 東京都が発行する愛の手帳の交付を受けた者
 三 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)第四十五条第二項の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者
 四〜七 (略)

と、あっさり書かれており、上記のような迂遠な規定ぶりは、ややマニアックになってしまうのでしょうか。
 なお、療育手帳の規定ぶりを巡ってのbranchさんやexaさんとの過去のやり取りはこちら→http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060208/p1