自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

指定管理者の取消訴訟

 指定管理者に管理を任せる施設で使用される各種通知に記載されるべき教示の文言について、人に聞かれました。
 えっと、処分の主体が指定管理者である場合において、不服の申立ては上級官庁として首長が審査請求で受けるとして、訴訟の提起は…あれ?
 随分前に頭で汗をかいた記憶はあるのですが、とりあえずググってみると、洋々亭さんのところの掲示板で投稿が

 指定管理者が行った処分に係る被告適格は、当該指定管理者にあります。

 処分庁・裁決庁が国または公共団体に所属しない場合(11条2項)とは、処分権限を委任された指定機関(指定法人等)が処分をした場合に、当該指定法人等が行政庁として被告適格を有する場合が典型として想定される。すなわち、民間法人(法人の設立根拠上、行政主体ではなく、通常の民事法上の法人と解釈されるもの)が、行政上の事務を行う局面で処分権限を有する場合に、当該法人を被告とすることになる。指定法人が行う事務が帰属する行政主体は何かという詮索は必要ない。
「解説 改正行政事件訴訟法」(弘文堂)108ページ

 また、行政処分に係る不服申立て先(行政不服審査法のジャンル)と行政訴訟の被告適格(行政事件訴訟法のジャンル)は別のものです。

建築基準法が定める指定確認検査機関として民間業者が建築確認を行う場合(建築基準法6の2)には、当該民間業者を被告として建築確認の取消訴訟を提起していくことになる。
「詳解 改正行政事件訴訟法」(第一法規)151ページ

 上記の例の不服申立は、自治体の建築審査会に審査請求を行う形で行われます。上記のとおり、建築審査会に被告適格はありません。

建築基準法
不服申立て
第九十四条 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第三条第二項に規定する処分庁又は不作為庁が(略)指定確認検査機関である場合にあつては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第六条第一項(第八十七条第一項、第八十七条の二又は第八十八条第一項若しくは第二項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる。

 公の施設の使用に係る不服申立ては、直営の場合は、市長への異議申立てを経た上で県知事への審査請求が可能ですが、ご承知のとおり、県知事には市の公の施設の使用に係る被告適格はありません。
 ご参考まで、指定管理者の被告適格について、東京都が規則における教示事項として定めた事例をご紹介します。

(参考)指定管理者がこの様式を交付する場合は、教示文2中「東京都を被告として(訴訟において東京都を代表する者は東京都知事となります。)とある部分には、指定管理者の名称及び当該指定管理者を被告とすべき旨を記載すること。」
自治体例担当者のための主要法令トピックス第57版(2005年8月号)17ページ」

http://www.hi-ho.ne.jp/cgi-bin/user/tomita/yyregi-html.cgi?mode=past&pastlog=5&subno=543

 そうそう、そうだよね、と思って投稿者を見ると
3年前の俺でしたorz
 物忘れは歳のせいもあるかもしれないが、こうも細々といろいろなことをやっているとね。