自治体法務の備忘録

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古紙持ち去り禁止条例の法設計

 ごみ集積所からの古紙持ち去りについて、最高裁で有罪判決が確定した旨は、tihoujitiさんがご紹介されており(http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20080719/p1)、最高裁のサイトではまだ判決文がアップされていませんが、この分野の法設計においては、tihoujitiさんがご指摘のとおり

 結果的には勝訴となったため、類似の条例を制定する場合は世田谷区の条例を参考にすることも考えられるが、明確性など数々の論点についての司法の判断等を精査の上で、よりよい条例を制定することが望ましいかと。

ということに留意することになりましょう。
 さて、タイミング良く、北海道町村会法務支援室のサイトで、「資源ごみ持ち去り禁止条例の考え方(http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/siryoukan/fukusisi%20jissenjyourei18.htm)」の掲載がありました。併せて掲載の、類似の条例を比較した「条例論点比較表(http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/siryoukan/021shigengomimochisari.xls)」も非常に参考になります。
 上記の紹介では、実効性を担保する為の手段として「刑罰、公表、又は過料を科す」規定ぶりについても触れられていますが、個人的な考えでは、「公表」は、実質的な「制裁」措置であっても、第三者による排除(消費者に対し、適正な行為を行わない事業者を公表など)や危険な状況の周知(不適正な製品製造を実施した事業者の公表など)を目的としなければ実施に意味がない(効果がない)と思うところであり、であればこそ、あくまで「建前上」は「情報提供」としての制度設計が本来であろうと思うところです。
 もし、純粋に対象者の「不利益」を目的としたものであれば、「不利益処分」として踏み込んだ法設計が試みられてしかるべきではないか、というのは、以前にも書いたとおりです。
【「公表」という手法】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070130/p3
【勧告・公表の処分性】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070501/p1
 とはいえ、以前に、条例の策定等で自らの回収率の向上を図るよりも、自治体による収集以外の市場が明白な現状において、自らが関与しないリサイクルのルートの構築を図ることも方途の一つであるのではないかと、中野区の試みをご紹介しましたが、自治体における総合的な政策判断の上で検討されるべき事項なのでしょうね。
【それでも自治体が収集すべきなのか】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070326/p4
【資源ごみの集団回収への全面移行】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070518/p1