自治体法務の備忘録

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計画段階で提訴可能=区画整理訴訟で門戸拡大−42年ぶり判例変更・最高裁

 土地区画整理事業の計画決定段階で住民が取り消しを求めることができるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎長官)は10日、計画段階では行政訴訟を起こせないとした最高裁判例を42年ぶりに変更し、住民側の提訴を認める判断を示した。その上で、訴えを却下した一、二審判決を破棄、審理を静岡地裁に差し戻した。15人の裁判官全員一致の結論。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2008091000666

 既にアップされた最高裁判決はこちら→http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36787&hanreiKbn=01

市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる

と、判決要旨は端的。
 判決文は、tihoujitiさんのご引用によるものが読みやすいです。
区画整理事業に係る最高裁判例が変更される】http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20080910#p1
 変更前の最高裁判決については、阿部泰隆教授(中央大学)による端的な批判が手元にありますので引用してみましょう。

最高裁(略)は、この事業計画はまだ事業の青写真にすぎず、訴訟の対象とならないとしている。しかし、事業が進んで、仮換地処分がなされてから取消訴訟を提起して勝っても、事業がどんどん進むので、今更、適切な土地が割り当てられる見込みはない。法的にも、その場合には違法でも公共の福祉の観点から現状回復させない、いわゆる事情判決の対象となる(略)。裁判所は、「計画の段階では早すぎる、仮換地処分の段階では遅すぎる」としてどこでも助けない。「行政訴訟はやるだけムダだった」のである。
「対行政の企業法務戦略」(中央経済社)178頁
※強調はkei-zuによる。

 同書では、「この事業計画を処分として、その段階で争えるように判例変更すべきであるが、それは我が国では至難である。」として、

  • 権利制限が付く事業計画の策定の時点で、あえて建築計画を立てて、不許可処分の取消訴訟を提起する。

という方法を提案されていますが、このたびの判例変更は先生のご批判の趣旨に沿うものでしょう。
 なお、上記の判決に先立って、最高裁で大法廷に回付された際に、拙blogで私自身は、

 横浜市の保育園に関する地裁判決を巡って、条例制定の処分性については既に認められる潮流にあることを過去に掲載したことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20061116/p1)、処分性の概念については思いのほか広いことになりそうです。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20071205/p2

と掲載させていただいております。