自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

自治体条例と制定権の限界

 さて、個人的にインカメラ審理に期待される役割については理解しつつ、その是非に関する判断は留保するとして、ここでは、純粋に法制執務として標記の件について指摘させていただきたいと思います。
 問題は、憲法に定める条例制定権が、司法への関与までを保証しているか否かです。この点については、以前に、奈良県条例に関する拙blogの記事のコメント欄で、同条例を巡って六角潤さんとやりとりさせていただいた経緯もあります(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20051214/p4)。
 法に対する積極的な条例制定論をもとより否定するつもりはありませんが、相手が独立性を保証された司法ではいささか躊躇せざるを得ません。その役割は、国権の最高機関である国会=立法府に期待されているのではないかと思うところ。
 ご存じのとおり、情報公開法は、その正式な名称を「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」とするものであって、その内容は国の機関が保有する情報の取り扱いを守備範囲とします。
 この法律の中で

地方公共団体の情報公開)
第二十六条 地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。

と要請されていることにより、各自治体はそれぞれ情報公開条例を定めていることになります(厳密にいうと、情報公開に関する法整備は国より一部の自治体が先行した状況はありますが)。
 各自治体の情報公開条例において、不服申し立てに係る対処としてインカメラ審理が規定されるのは、自治体の自主権の範囲内なのでなんら問題は無かろう。しかし、司法に場を移した場合の取り扱いについて、これを条例で定めうるか。
 情報公開法が改正されて司法の場におけるインカメラ審理が規定された場合、上記の26条に規定する「趣旨にのっとり」の言をもって、条例による司法への関与が認められたと解して良いのでしょうか。
 また、インカメラ審理に係る情報公開法の改正後に、これを規定しない条例に基づく訴訟が提起された場合において、やはりインカメラ審理は実施されえないのだろうな、とは思うのですが、翻って、法改正前に「先進的」な自治体が司法におけるインカメラ審理を情報公開条例に規定した場合、果たしてこれに基づいて審理は進められるのか。
 いろいろ疑問はつきないところです。