自治体法務の備忘録

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議員が提案する政策条例のポイント

 そんなことも背景にあるのか、地方議員向けの政策法務に関する解説書も刊行されてきています。

議員が提案する政策条例のポイント―政策立案の手法を学ぶ

議員が提案する政策条例のポイント―政策立案の手法を学ぶ

 出版社が警察や消防関係を得意とするせいか、その装丁が随分とコワモテのような。

 現在では都道府県や政令指定都市議会において、議員提案政策条例の潮流が強まりつつある。今後は、市議会や町村議会へと、その流れは広がっていくことと思われる。政策立案能力のない議員は、この世界で生きていくことは激しくなっていくだろう。
(「おわりに」228頁)

 本書は、議員提案の条例ばかりか、その背景なども含めた個別ケースについてわかりやすく紹介しています。
 個人的な感慨を言えば、その内容に込められた関係者の思いも地方自治に関与する身として理解できますし、また、地方分権一括法の施行後における条例制定権の拡大で、試みられている各種条例の制定は、分権後の自治体がそのアイデンティティを自ら模索している過程であろうとも思うものの、本書で紹介される事例の多くからは、今後の議員提案条例の展開に一抹の不安が拭いきれません。
 議員が提案する政策条例に期待されるのは、当然のことながら、本書で定義される「ユニーク条例」(そこには執行部提案のものを多く含まれますが)にとどまるものではないはずです。
 旧来的な法制執務観に捕らわれるわけではありませんが、「条例」が、憲法で保障する、自治体による「法」形式である限りは、やはり、単なる理念・宣言にとどまらない、具体的な法的効果を見据えた内容を期待したいと思います。
 とはいえ、著者としては、もちろん、本書での提示が議員による条例提案をスポイルするものでないわけでありましょうし、読者における発展的な理解を、執行部職員としては期待したいところです。
 なお、上記の個人的な感慨は、条例制定権の拡大に基づく先行自治体の各種試みを否定的に言及するものではありません。為念。