自治体法務の備忘録

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Re:地方自治法の一部を改正する法律

 半鐘さんがご掲載の記事から

第236条第1項の主語が「普通地方公共団体の歳入」でなく「金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利」となっている以上、そもそも私法上の債権をも含むと解するのが妥当だと私は信じたい。
(略)
地方自治法民法に対する特別法であることは、同条第3項からも明らかです。そうなると、第1項の「他の法律」は、介護保険法のような個別法たちを指すはずであって、民法まで含むのは、どこかがおかしい。
いや待て、民法を含むとしよう。ならば、それが適用される部分は「どこ」だ?
「5年間」のところだけ、ではないだろうか。
民法の適用を受ける債権は、債権自体が第236条第1項・第2項の対象にならなくなるように“思い込んで”いたけれど、そうではなく、期間は2年だったり10年だったりするけれど、一律に消滅にはなる。
そういう適用関係ではないか?
http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-109.html

 地方自治法の規定は以下のとおりです。

地方自治法
(金銭債権の消滅時効
第二百三十六条 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、五年間これを行なわないときは、時効により消滅する普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
2〜4 (略)

 この点で思い出したのが、自衛官が起こした交通事故に起因した国家賠償法に基づく損害賠償請求の時効が10年とされた事例です。

自衛隊八戸車両整備工場損害賠償】最高裁判所第三小法廷(昭和50年02月25日)

  1. 国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設若しくは器具等の設置管理又はその遂行する公務の管理にあたつて、国家公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負つているものと解すべきである。
  2. 国の安全配慮義務違背を理由とする国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は、一〇年と解すべきである

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=26811&hanreiKbn=01

 会計法で、国に対する債権の時効は5年とされています。事故発生から6年目に請求された内容が争われました。

会計法
〔金銭に関する権利の消滅時効
第三十条 金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、五年間これを行わないときは、時効に因り消滅する。国に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。

 半鐘さんが取り上げられているのは「自治体が持つ債権」、上記最高裁の事例は「自治体に対する債権」ではありますが、水道料判決以前にも、条文を字義通りに読むものではなく、関係各法令との相関関係の確認の上で解釈される事例はあったわけですね。ただ、この点、ご指摘のように、立法者意図とは異なるものかもしれません。
 なお、上記の自衛隊判決では、当該事案が、行政における大量の債務に係る取扱いの便宜を前提とした会計法の適用除外とされたものであって、水道料判決において、大量の債務に係る事務ではあるもののその性格から私債権とされた点で違いはあります。
 とはいえ、私も個人的には、水道料を含む自治体の私債権についても、住民に授権された行政事務の適正かつ円滑な運営から、公債権として一律に処理することができる議論はあって良いとは思います。