自治体法務の備忘録

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専決者と個人的な賠償責任

 課職員の事務執行の誤りにより市に損害を与えたことについて、その監督責任を起因として個人的な賠償責任までをも認めた高裁判決が日本中の専決権者を震撼させたのは記憶に新しいところです。

事例から学ぶ住民訴訟

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 専決者は、日頃から部下の職務遂行について注意を払う必要があります。また、専決権限を与えられていない職員は、自身に賠償責任が及ばなくても、最終的には同じ職場の誰かが責任を負うことになるのだということを自覚しておく必要があります。
(43頁)

 判決からいささか時間が経過してしまいましたが、これを破棄自判とする最高裁の逆転判決を、届いたばかりの「判例時報」No.2028に見つけました。

【損害賠償代位請求,損害賠償請求を求める請求事件】(平成20年11月27日)最高裁判所第一小法廷
県が職員の退職手当に係る源泉所得税を法定納期限後に納付し,加算税等を徴収された場合において,納付に必要な出納長に対する払出通知が遅滞したことにつき,同通知に関する専決権限を有する職員に重大な過失はなく,同職員は県に対して地方自治法(平成18年法律第53号による改正前のもの)243条の2第1項後段の規定による損害賠償責任を負わないとされた事例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=37045&hanreiKbn=01

 なお、本件は、その事情が総合的に考慮された上で、専決者が著しく注意義務を怠ったということはできず、重大な過失があったとまでは認められなかったというものです。
 監督責任に基づく損害賠償責任が一概に否定されたものではありませんので、全国の専決権者の皆さま、ご留意を。