自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

訴訟への姿勢と政策法務論

 ちょっと前にtihoujitiさんが掲載された記事から

 ここで、訴訟リスクに対する2つのスタンスが存在するように思う。
 1つは、訴えられること自体をリスクと捉えること。
 もう1つは、敗訴することをリスクと捉えること。
 検討し、実行する際の判断基準について、前者は「提訴されるか否か」と「仮に提訴された場合、耐えられるか否か」の2つが存在するのに対し、後者は「仮に提訴された場合、耐えられるか否か」のみであろう。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20090308/p1

 さて、私は前職の民間時の振り出しが、生命保険会社の支払査定部門でありました。
 保険金の支払いは、商品ごとの定められる「約款」という、会社と顧客の決めごとに基づくものなのですが、その内容に合致した適正な支給が期待されます。具体的に説明しますと、例えば、被保険者が変死体で発見された場合において、その死亡に事件性を認めるか否かで、災害割増の支給の判断が異なるわけです。
 なかなか判断がつきにくい事例も多いのですが、その判断に当たって先輩にたたき込まれたのが、まさしく「仮に提訴された場合、耐えられるか否か」でありました。
 顧客からの苦情や販売拡大にあぐねる現場からの圧力に屈せず、保険数理の冷たい方程式を健全に維持し、保険料を払い込んでいただいている他の多くの顧客のためにも、査定担当者に期待されたのは、まさしく敗訴リスクも見据えたコンプライアンス意識であったわけです。
 このことについては、3年前になりますが、branchさんやnationfreeさん、六角潤さんのお言葉を引いた上で、今後の自治体法務の展開について、さやかな期待を掲載させていただいたことがありました。

【実務屋からの弁明】
この点が、私などより遙かに自治体法務にお詳しい方が多くいらっしゃる中で、私自身にささやかなアドバンテージになっていると思います。
そして、そのような「異端」の発想は、今後は「政策法務」の旗の下に主流になり得るのではないかと密かに期待するところであり、「理論」と「実務」の隔絶を実践をもって埋めていくことが、これからの自治体法務担当に期待されているものであると考えています。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060417/p1

 tihoujitiさんを含め、現在の皆さまとの交流の中でも、その思いを新たにするとともに、自治体法務の今後の展開を期待するところです。