振られるばかりが人生じゃない
久しぶりに参議院法制局のコラムを覗いたら、「禁錮(こ)」を例に挙げて、法令用語に関する振り仮名の記事がありました。
【「禁錮(こ)」の表記】http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column080.htm
時系列的に「錮(こ)」の取扱い表記の変遷について記述されています。
よく聞かれるところではありますが、法制執務の変遷については「トレンド」としか説明できないのですよね。
この要領に従い、おおむね昭和30年以降、「禁錮(こ)」という表記が用いられています。ただし、禁錮が2回以上出現する法律には、条文上禁錮に言及するごとに振り仮名を付けるもの(例えば、武力紛争の際の文化財の保護に関する法律(平成19年法律第32号))と初出の禁錮にのみ振り仮名を付け、その後に出てくる禁錮には振り仮名を付けないもの(例えば、更生保護法(平成19年法律第88号))があります。
そういえば、3年ほど前に、宅地造成等規制法等の改正で、「崖」の振り仮名を2度目以降にも表記するのかしないのかでバタバタしたことがありました。
【2回目のルビを振るとか振らないとか】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20061026/p1
その際に引用した、参考書の記述は以下のとおりです。
やむを得ず常用漢字でない漢字を用いる場合には、振り仮名(ルビ)を付ける。
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次の例のように、専門用語等で、他に言い換える言葉がなく、しかも平仮名で書くと理解することができないと認められる場合には、常用漢字表にない漢字を用いることになるが、その場合には、必ず、振り仮名を付ける。なお、かつては、法令文において当該用語が登場するたびに振り仮名(ルビ)を付けていたが、最近の新規立法例においては、初出の際に一回だけ振る例が多い。古い法令の一部改正の場合には、その法令における用例に従い、毎回振ることになる。
(213ページ)
※強調はkei-zuによる。
上記の宅地造成等規制法と都市計画法の改正では、「崖」のふりがなについて2度目以降の表記に不整合がありまして、どうにも頭を悩ませたものです。
この場合、都市計画法で2度目以降の表記に振り仮名があったのは、既存の表記方法にしたがったからでした。
私「ってことは、都市計画法には同一語句に対するルビが既にあるってことになるね。」
同僚「ほんとだ。89条の2項と3項に、それぞれ『賄賂(ろ)』があります…」
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20061026/p1
さて、冒頭の参議院法制局のコラムに戻って以下の記述。
法律の制定時と改正時の用語の表記の基準の違いを反映して、自衛隊法(昭和29年法律第165号)のように、「禁こ(、)」と「禁錮(こ)」の両表記が混在するということもあります。
混在の可否の判断がどうにも難しいところですな。
なお、「武力紛争の際の文化財の保護に関する法律」は平成19年の制定にもかかわらず、なぜか2度目以降もふりがなが表記されていますが、閣法である同法について、参議院法制局は何もコメントしてくれていません。