自治体法務の備忘録

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「住民自治」の意味とは

 「ガバナンス」誌の最新号(09年8月号)で、今井照先生(福島大学)が、最近は「住民自治」の意味が違って使われ始めているのではないかとの懸念を示されています。

 最近、「住民自治」という言葉の理解、使い方が変質しているのではないか。本来は、まさに自治体政府を住民がどうガバナンスしていくか、統制していくかが住民自治と言われてきた。だが、最近、研究者でも「住民が自らやるべきことをやるのが住民自治だ」などと異なる使い方をしている人たちがいます。
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 上記は「ガバナンス」誌100号記念として「地域ガバナンスの現在・未来」と題された、片山善博先生(慶応大学)や福嶋浩彦先生(中央学院大学)との対談におけるご発言からの引用です。今井先生は同誌における連載記事においても、本来は「団体自治」と併せて地方行政に期待されるべき、この「住民自治」について、もう少し突っ込んで記述されています。

 教科書を引けば「住民自治とは、地方行政を中央政府の干渉を廃してその地方の住民の意思で自主的に処理させること」であり、「団体自治とは、国から独立した法人格を持つ地域団体を設け、この地域団体をして地方行政に当たらせること」とされる(略)。
 つまり「団体自治」も「住民自治」も自治体政府というひとつの概念なのであって、別々に存在しているわけではない。

 上記の記事中で指摘されている条例の記述は以下のものです。

岐阜市住民自治基本条例】
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 (1)〜(6) (略)
 (7) 住民自治 市民自らが参画し、協働し、まちづくりを主体的に進めることをいう。
 (8) (略)
http://rule2.lifelong.city.gifu.gifu.jp/reiki_honbun/i7001409001.html

 懸念されるべきは、昨今の「住民自治」の用語の使い方が、地方政府に本来期待される役割をすり替えるようにも読み取れることか。いや、岐阜市条例にその意図があるといっているのではないですよ、念のため。
 個人的に思うところ、ここで思い出さなければいけないのが、地域における協働の推進が行政の仕事の押しつけにつながりかねないとの批判ではないか。
 今井先生は「もう少し、皮肉っぽくいえば、市町村(役所)が基礎的自治体ではなくなってしまったという宣言が新しい定説なのかもしれない。」と記事の終わりに書かれています。
 何より「共助」と認識される領域において、地域の福祉の充実と行政の限りある財源・資源の適性な運用が必要なことは論を待ちませんが、市民に負託された責任を達成すべき地方政府の役割については、これからも引き続き地域と探っていく必要があるのでしょうね。