自治体法務の備忘録

管理人のTwitterは、@keizu4080

議会と先例集

 私たちが地方議会において、その運営に当たっては、地方自治法や関係政省令、また、条例や議会規則に定めるところによっているのはご存じのとおりでしょうが、六法全書例規集にも掲載されていない、国会の「先例集」に掲載されている事項が参考にされることもあります。
 先日、拙blogでご照会した

議会用語事典

議会用語事典

においても、いくつもの「先例」の掲載が見受けられます。
 この「先例」、その内容について、参議院のサイトには以下のように説明があります。

【議院規則と先例】
 国会は、憲法、国会法及び衆・参議院規則などの議事関係法規に従って運営されていますが、これらの法規だけであらゆる事態に対応することは不可能です。(中略)このように、法規の内容では足りないところを補充しながら円滑な議事運営を図るためよりどころとなるのが先例です。
 従来から、衆議院では「衆議院先例集」及び「衆議院委員会先例集」を、参議院では「参議院先例録」及び「参議院委員会先例録」を発行しています。これらは主要な先例を項目ごとに分けて説明した冊子で、その編集作業は衆参両院の事務局がそれぞれ行っています。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/giinkisoku.html

 ところが、その「参議院先例集」、これまで10年に1度改訂されてきたにもかかわらず、先の改訂時期であった平成20年には改訂されませんでした。
 その理由は、第1党を民主党が占め、いわゆる「ねじれ国会」の状況から想定外の出来事が続き、これを先例とすることに当時の与党であった自民党の抵抗が見込まれたから、と当時の報道では伝えられていました。
 さて、「先例」という呼称からか、これを否定的に捉えられる記事もウェブ上には掲載されています。

433
 議員は、議場又は委員会議室においては互いに敬称を用いる。議員は、議場又は委員会議室においては互いに敬称として「君」を用いる。
※強調はkei-zuによる。

という先例について、

明治末期までは、『君』という敬称が一般的に使われていたそうです。
現在では、国会の中でのみ通用する独自の敬称ですね。

という解説者の発言に対し、

 国会の中って、時間の止まった独特の世界なんだね。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~chu/law/hori_457.htm

と、ツッコミ役の発言は手厳しい。まあ、結局は慣例と取り決めに過ぎませんから、運用の問題であるかと思います。土井たか子衆議院議長は「さん」付けで呼んでいたんじゃないかな。
 一般に地方議会で見られる、複数内容を一括して質問し、答弁する方式も帝国議会時代からの「先例」によるものですが、いくつかの自治体で、内容ごとの一問一答方式が試みられているのはご存じのとおり。
 もとより、地方議会において国会の先例をどれだけ参考にするかは、それぞれの自主性に基づくものであるので、住民により近い議決機関としての地方議会のあり方は引き続き模索されるべきでありますが、国会においても、先の総選挙で衆議院議席を大幅に増やした民主党がどのように議会運営を行って行くかは注視していくべきでしょう。
 とはいえ、それにご対処される霞ヶ関の中の方々のご苦労はいかばかりか、と個人的にちょっと心配ではあります。