自治体法務の備忘録

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定額給付金に関する自治体匿名アンケート

 定額給付金に関する事務もいよいよ終盤にさしかかりました。総務省の報道資料として、9月28日時点の給付状況が、今月2日に公表されています。

○9月28日時点での状況を全国の市区町村に調査したところ、全国で給付対象世帯の94.9%(前回:93.6%)に定額給付金を給付済みという結果となった(給付済み金額の合計は、1兆9,076億円(予算額に対する割合は97.5%(前回:96.7%)))
http://www.soumu.go.jp/main_content/000039876.pdf

 その総括はこれから実施されるべきでしょうが、いささか遅ればせながら「地方行政」(時事通信)8月31日号に、本事業に関して各自治体からの匿名コメントが記載されていましたので、いくつかピックアップしてみましょう。

【制度への異論】

  • 莫大な事務費を使ってまでやる価値がある事業かどうか、疑問である。ほとんどの人が定額給付金を受け取っているが、この事業でどのような効果があったのか、全くと言っていいほど国から伝わってこない。(後略)
  • このようなことは、今後やめてほしい。国がやろうという事業を自治体に丸投げした形であり、子育て応援特別手当も含めて、市民からの「なぜ?」との質問に答えられないことがあった。2兆円の予算があるのなら、各自治体に分配し、それぞれの事情で優先順位を付け、真に必要な経済対策に使った方がはるかに効果的だ。(後略)

【手法への疑問】

  • 自治事務と言いながら、内容は法定受託事務であった。実施主体は市町村と言いながら、市町村の裁量はほとんど無いに等しかった。(後略)
  • 総務省が、事務費について徐々に締め付けをしてきた。
  • 国が出してくるQ&Aが、こちらの事務作業に追いついてこないことがあった。
  • 最も多い苦情は、報道などで人口規模の小さい市町村が給付を開始したことを受けての、申請書発送が遅いという内容であった。(後略)
  • 具体的なものが決まらないうちに、見切り発車でスタートしたやり方がNG。
  • 口座振込手数料について、国が予算を出してしまったため、銀行側とギリギリまで折り合いが付かなかった。

【苦労】

  • 単身高齢者で認知症もある方の場合、いくら説明しても分かってもらえず、申請を受け付けられない方が数名いる。
  • 市民からの問い合わせが質・量ともに当初の予想を超えてハードであったであったので、その対応に苦労している。
  • 都市規模が大きいことで準備を要することは全く理解されなかった。

【その他】

  • 新聞などのマスコミも配る前だけ盛んに取り上げ、配った後は無関心というのが目立つ。今回のアンケートのように、フォローアップしていくべきだ。

※それぞれの標題は記載記事のとおりです。

 このたびの取扱いは多分に政治的であったもので、総務省の中の人のご苦労も察せられるところ。
 ただ、事務費だけでなく、自治体の消耗も激しかったのは事実です。最後のご意見のように、この経験を今後に活かすべく、意見の集約が他にも試みられてしかるべきだとは思います。