自治体法務の備忘録

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法令読解心得帳

法令読解心得帖―法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方

法令読解心得帖―法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方

 「元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術」「ビジネスマンのための法令体質改善ブック」の洒脱な解説で有名な吉田利宏氏の最新刊。これがまたおもしろい。
 例えば、以下は政省令に関する説明から

 委任命令と執行(実施)命令は、理論的には別のものです。憲法行政法の本にもそう書いてあります。しかし、実際のところ区別しにくいものもあります。国民の権利義務に関する事項なのか、手続として割り切っていい事項なのか難しいことも多いのです。おへその当たりを指されて、「ここは胴なの?腰なの?」と聞かれても、ハッキリ答えられないでしょう。それと同じです。
※強調はkei-zuによる。
(13頁)

 「同じじゃねえよ!」と突っ込んでしまったら、著者の思うつぼです。
 憲法を頂点とする法のヒエラルキー(階層)や、総則・実体的規定・雑則規定などの法文の構成など、著者の滑らかな解説には、時折唸り、時折笑わさせられます。初心者を対象とした前記の2冊に比べ、専門誌「法学セミナー」に連載された本書の内容は、これらから発展的な知識の習得に向くかと思われますので、ご興味ある方は是非手に取ってみてください。
 法令マニア度(やだな)もいささか濃くなっていまして、

  • 平成16年改正まで、民法には法律番号が2つあった。
  • 平成12年の改正まで、公職選挙法には「都道府県が第143条((文書図画の掲示))第17項の規定により処理する事務」のように、本文中に各条文の「見出し」が掲載されていた。
  • 平成18年の改正まで、教育基本法の「見出し」は、「第1条(教育の目的)」のように条文番号の下に付されていた。

 そうそうそうなのよ、のトリビアもいっぱい。いや、実務の役に立つかはともかく。
 また、衆議院法制局にお勤めされていたご経歴からの、立法を巡る政治の動きに関する記述は、私のような地方公務員にとっても興味深い内容です。
 なお、本書の後半は、

リーガル・リサーチ

リーガル・リサーチ

のご著書がある、いしかわまりこ氏による法令データの検索の仕方。前半の記述に対応する形で、法令の検索の例が示されます。
 実務的には大いに活用できる内容ですが、「吉田節」ファンとしては、単著での刊行であったらな、と思うところです。