自治体法務の備忘録

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『条例制定は訴訟対象』 保育園民営化 最高裁 保護者ら請求は棄却

 横浜市が実施した四つの市立保育園の民営化をめぐり、保護者ら四十一人が「性急な民営化で保育の質が悪化した」として、民営化取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(桜井龍子裁判長)は二十六日、保育園を廃止・民営化した条例制定について「訴訟の対象となる行政処分に当たる」との初判断を示した。
http://kinkin2.blog42.fc2.com/blog-entry-370.html

 判決文は既に最高裁のサイトに掲載されています。

 条例の制定は,普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから,一般的には,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが,本件改正条例は,本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって,他に行政庁の処分を待つことなく,その施行により各保育所廃止の効果を発生させ,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから,その制定行為は,行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。
 また,市町村の設置する保育所で保育を受けている児童又はその保護者が,当該保育所を廃止する条例の効力を争って,当該市町村を相手に当事者訴訟ないし民事訴訟を提起し,勝訴判決や保全命令を得たとしても,これらは訴訟の当事者である当該児童又はその保護者と当該市町村との間でのみ効力を生ずるにすぎないから,これらを受けた市町村としては当該保育所を存続させるかどうかについての実際の対応に困難を来すことにもなり,処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091126111108.pdf

 tihoujitiさんもご指摘のとおり、前半は昨今の潮流であったとはいえ、後半部分の視点は興味深い。

 でも、第三者効を有するものとすると、この保育園の民営化を例に挙げると、保育園の民営化に賛成する保護者・幼児もいるかもしれないので、そういった保護者・幼児は、行政側について訴訟参加することになるのかしらん。でも、それもなんか変ですよね。
http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20091126/p1

 そう、そこはすごい気になる。
 なお、拙blogにおいて、過去に原審について記載した記事は以下のとおり。時系列は、上から新しい順です。
【保育園民営化、訴え却下=横浜の保護者ら逆転敗訴−東京高裁】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20090129/p2
【条例制定の処分性】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20070402/p5
【条例制定の処分性について】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20061116/p1
横浜市保育所民営化取消訴訟横浜地裁判決2】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060529/p2
【「保育園の民営化、裁量の範囲逸脱」横浜地裁判決】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20060522/p1