自治体法務の備忘録

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名を変えて、姿を変えて嫁いだ「法律」

 民事訴訟法の引用に「(平成8年法律第109号)」と記述したところ、後輩に聞かれました。
後輩「民事訴訟法って、昔からあるんじゃないんですか?制定が平成8年?」
 口語化に伴う全部改正だよ、と答えようと思って、六法を開いてみたのですが、全部改正の形跡がありません。全部改正でしたら、目次の前に

 民事訴訟法(明治23年法律第29号)の全部を改正する。

の一文が入るはず。あれあれ?
 現行法の原始附則をみれば経緯がわかるかと思ったのですが、有斐閣の六法でも記載が省略されています。結局、制定時、平成8年6月26日の官報を引っ張り出すことに。

   附 則
(旧民事訴訟法の一部改正)
第二条 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)の一部を次のように改正する。
  民事訴訟法目録を削り、題名を次のように改正する。
    公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律
(以下略)

 なるほど、名前を変えて生き残った訳ね。新法にごっそり整理されたので、旧法の条文はすごいことになっていました。

【公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律】
   第一編 総則
民事訴訟に関する法令の準用〕
第一条
 別段ノ規定アル場合ヲ除くノ外公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関シテハ其性質ニ反セザル限リ民事訴訟ニ関スル法令ノ規定ヲ準用ス
第二条乃至第二百二十二条 削除
   第二編乃至第六編 削除
第二百二十三条乃至第七百六十三条 削除
   第七編 公示催告手続
第七百六十四条 (略)
(以下略)

 第1条の次が第764条。なお、末条は第785条です。
 wikipediaには以下の説明がありました。

その後、民事訴訟法(平成8年法律第109号)が施行されたことに伴い、旧民事訴訟法は「公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律」と題名を変えて残っていたが、仲裁法(平成15年法律第138号)が制定されたことに伴い、公示催告手続のみを規定する「公示催告手続ニ関スル法律」という名称の法律になった。さらに、公示催告手続につき改良した手続を非訟事件手続法明治31年法律14号)に加える旨の改正がされるに及んで、最終的に明治23年法律29号は廃止されることとなった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E4%BA%8B%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E6%B3%95

 結局、この法律の命も短いものになってしまったわけ(廃止は平成16年法律第152号による)。
後輩「編み込まれた先の『非訟事件手続法』って、過料の取扱いについての規定があるんですよね」
私「もともと附則に編まれていたのが、『公示催告手続ニ関スル法律』の内容が編み込まれた際に、第4編として編み込まれたそうだよ」
 うーん。浮き世の流れに、名を変え、姿を変えて身を寄せるあてを探す身と、それを迎え入れるに当たって自らの身辺も整理する身ということか(違う
 人ばかりでなく、法にも歴史あり、ですなぁ。