自治体法務の備忘録

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原告適格、墓地から百メートル−東京地裁、異例の認定

 杉原則彦裁判長は、その上で「設置許可は行政の裁量の範囲内」として30人の請求は棄却。約127・5メートル先に住んでいる1人については却下した。
(略)
 墓地の設置場所は「住宅、学校などからおおむね100メートル以上」と定めた都条例に基づき、その範囲内の住民の原告適格を認めた上で「墓地は排水設備など条例の設置基準を満たしており、衛生環境を悪化させない」と判断した。
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010041601001024.html

 拙blogをご覧になる方々には説明するまでもありませんが、周辺住民に被告適格を認めなかった10年前の最高裁判例を覆したのは、行政事件訴訟法の改正に基づく被告適格の拡大によるものでしょう。
 ひとつだけ興味深い指摘をさせていただきますと、この距離制限、報道のとおり都条例に定められているものですが、条例の根拠となる法律(墓地、埋葬等に関する法律)には、規制について条例に委任する規定がありません。条例が独自に規制を定めている状況にあります。
 根拠のない「上乗せ」は違法となるのではないかと思いがちではありますが、この場合、「法律を執行するに際しての必要な事項が条例で定められている」ということになります。
 「委任条例」ではなく「執行(実施)条例」ということになりましょうか。
 そもそも、墓地、埋葬等に関する法律には、罰則まで含めて全22条の短い法律で、必要な内容がすべて定まっているとは考えられません。「執行(実施)条例」の適否については、形式的に「法の委任の有無」にその根拠を求めるのではなく、「法がその執行のために必要な範囲内の規定であるか否か」がメルクマールになるわけです。