自治体法務の備忘録

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阿久根市賞与、市長が独断で半減

 鹿児島県阿久根市竹原信一市長が独断で、一般職員211人や市議16人、市長のボーナスをほぼ半額にする条例改正の専決処分を28日に行ったことが分かった。市職員労働組合や市議会に説明をしないまま頭越しで強行しており今後、対立の激化は必至とみられる。
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100529-OYS1T00183.htm

 ご承知のとおり、自治法179条に基づく専決処分の要件は限定されています。

地方自治法
〔専決処分〕
第百七十九条 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。
2 議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。
3 前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。

 ここでは、対象となった賞与の額について適不適の見解は、職員の給与に関する住民の方々のご意見も踏まえ政治的問題として留保させていただきますが、公選の議員により組織される、議決機関たる議会を排除するような市政運営は、民主主義の危機と指摘されざるを得ないのではないでしょうか。
 上記記事に引用される、前鳥取県知事の片山善博教授(慶応大学)のお言葉は、ご自身が県議会と緊張感ある対峙をされたご経験を踏まえての厳しいご指摘かと思います。

地方自治のルールを無視した運用であり、違法で無効だ。現在の阿久根市は無法地帯ともいえ、こんなことを行う市長は法治国家の首長としてふさわしくない」

 5月の初旬に、やはり専決処分された花火禁止条例は、それでもゴールデンウィークを前にした緊急性が訴えられたようですが、このたびの報道では専決に付すべき説明もされていないのが気がかりではあります(報道以外での説明があるのかもしれませんが)。
 専決処分については、その後の議会への報告に対して承認が行われなかったとしても、すでに行った専決処分の効力には影響がないと一般的には理解はされていますが、専決処分自体が違法とされた事例はあり、その判決文は最高裁のサイトにアップされています。

したがって,本件専決処分については,「普通地方公共団体の長において議会を招集する暇がないと認めるとき」という要件を充足しないから,これによって制定された本件改正条例は,効力を有しないというべきである。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070704095740.pdf

 事例では、事前に議会が明白に否定の判断をしている点が本件とは異なりますが、このたびの専決も、まずは議会の判断が請われるべきでありましょう。