自治体法務の備忘録

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強制する法務・争う法務

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

行政上の義務履行確保と訴訟法務「強制する法務・争う法務」

 かながわ政策法務研究会の席で著者の鈴木潔先生にご挨拶させていただいたことは先日の記事で記載しましたが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100705/p1)、その懇親会の折、本書を夢中で読ませていただいた思いの丈を述べさせていただきました。ビールをおいしく頂いている最中だったので、後から思い返して失礼があったらと誠に恐縮の至り。
 宝塚市パチンコ店等規制条例事件に関する最高裁判決に見るごとく、実効性の確保は行政の運営に委ねられているところですが、自治体における体制上の問題のみならず、法的な整備の遅れや不十分さが事務執行に立ちふさがっています。
 行政代執行法が自治体条例による義務履行の確保を想定しないのは、自治体法制上よく議論されるところですが、本書によれば、行政代執行法を所管する省庁が存在しない現在は問題が見えにくくなっている由。自治体が積極的に声を上げていく必要性を指摘します(108頁)。
 とはいえ、本書の特徴は、上記のような制度上・運用上の問題点に関する指摘ばかりでなく、自治体における義務履行と訴訟法務の事例が多数収録されている点です。どのような「フィールドワーク」を経たのかは不明ですが、現場における実践の記録は参考になるばかりか、実務担当者として身につまされます。
 事例から改めて問題点が確認出来る事項もあり、興味がつきません。自治体法務担当者は必読。
 なお、行政における実効性の確保については、北村喜宣教授(上智大学)によるその名も
行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

という書籍もあります。こちらはまたの機会に。