自治体法務の備忘録

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教育委員長と教育長

「教育委員長と教育長って、どう違うんですか?」
 庁内の若手職員に聞かれました。
私「ちょうど今読んでいる本に、わかりやすい説明があったな」

(前略)教育委員長は、5人ないし3人の教育委員の代表。いわば素人の代表になる。大学教授や弁護士などの学識経験者が多い。
 これに対して、教育長は、教育委員のひとりではあるが、教育委員会事務部局の代表。(中略)学校の校長を退職した人や、役所に長年勤務したベテラン行政マンが就任することが多い。
(202頁)

若手職員「どっちが偉いんですか?」
私「事務委任により教育長名で教育委員会の事務執行が行われることも多いからわかりにくいんだけど、教育長は『事務屋のトップ』だから。行政委員会としての教育委員会の意志決定機関は、合議体としての『教育委員会』。それを代表するのが教育委員長なんだから、理屈の上でどちらが上かはわかるよね」

地方教育行政の組織及び運営に関する法律
(委員長)
第十二条  教育委員会は、委員(第十六条第二項の規定により教育長に任命された委員を除く。)のうちから、委員長を選挙しなければならない。
2  委員長の任期は、一年とする。ただし、再選されることができる。
3  委員長は、教育委員会の会議を主宰し、教育委員会を代表する。
4  委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、あらかじめ教育委員会の指定する委員がその職務を行う。
(教育長)
第十六条  教育委員会に、教育長を置く。
2  教育長は、第六条の規定にかかわらず、当該教育委員会の委員(委員長を除く。)である者のうちから、教育委員会が任命する。
3  教育長は、委員としての任期中在任するものとする。ただし、地方公務員法第二十七条 、第二十八条及び第二十九条の規定の適用を妨げない。
4  教育長は、委員の職を辞し、失い、又は罷免された場合においては、当然に、その職を失うものとする。
(教育長の職務)
第十七条  教育長は、教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる。
2  教育長は、教育委員会のすべての会議に出席し、議事について助言する。
3  教育長は、自己、配偶者若しくは三親等以内の親族の一身上に関する事件又は自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件についての議事が行われる場合においては、前項の規定にかかわらず、教育委員会の会議に出席することができない。ただし、委員として第十三条第五項ただし書の規定の適用があるものとする。

 なお、同書には、戦後GHQの意向により当初公選であった教育委員が、その後の法改正により首長任命とされた経緯が簡単に記述されています。

 1956年(昭和31年)、国会で与野党が対立し、参議院では警官隊が国会に入るという異常な状態の中で、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が成立し、教育委員会制度は変更されました。
 教育委員は公選ではなくなり、任命制になりました。地方公共団体の長つまり都道府県知事や市町村長が、議会の同意を得て任命することになったのです。教育委員が独自に教育予算を作る権限も失われました。
(200頁)

 独自の予算策定権と予算案提出権を持っていたというのも今となっては俄かに理解しがたいところがありますが、教育委員会自体の制度上のわかりにくさもこのあたりの経緯にありそうですね。