「小規模自治体の価値」とは
「経済的合理性から考えると、小規模自治体は無くなってもかまわない」という意見に対し、どのような説明からこれを否定することができるでしょうか
上記の質問は、私が自治体学会の席上で、ある方から受けた質問です。質問をされた方は本当に苦しんでいるご様子で、絞り出すように言葉を選んでいたのが印象的でした。
私「それは…、例えば『多様性の存在』や『地域自治の実践』などから説明すれば良いではないでしょうか」
質問者「いや、相手の土俵である『経済合理性』で回答が探したいんです」
「地域での実践に基づくビジネスチャンスの創設」などともお答えしてみましたが、残念ながら、腑に落ちたご様子は見受けられませんでした。
それ以降もその質問がずっと私の中にとどまって、明確な答えを探しあぐねていたのですけれど、そんな折、参加させていただいたのが、先日ご紹介させていただいた「全国小さくても輝く自治体フォーラム」(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100926)でした。
「緑の分権改革」をテーマとした分科会での質疑応答の中で、壇上の方々に思い切って上記の内容をぶつけてみました。
私のぶしつけな質問に対し、大森彌先生(東京大学)は以下のように答えてくださいました。
これを受けて、同分科会での事例報告者として講演された徳島県上勝町の笠松和市町長が補足してくださいました。
- 数十年前には冬に上勝町で見られた氷柱や厚い氷も今や見ることができない。大都市の10年後の環境を想定することができるか。
- 地球環境の限界を踏まえ、「地域」での対処が行われるべきだ。
- 社会変化は急激に起こる。国・県の言うことをそのまま信じて行うことが正しいかは、常に疑問を持っていなければいけない。
やはり壇上におられた福島県安達郡大玉村の浅和定次村長は以下のように補足してくださいました。
前述の拙blogの記事でもご紹介させていただきましたとおり、笠松町長には、林業やリサイクルの推進などについて積極的な試みされています。お二人の首長のお言葉には、自治体こそ違え、一職員として励まされるものがありました。
前後しますが、同フォーラムで分科会に先だって実施された、岡崎昌之先生(法政大学)による基調講演「小規模自治体と地域振興・地域再生」では、文字どおり「小規模自治体の価値」として以下のご指摘がありました。
自治体のあり方論は転換期ですが、同フォーラムの最終日に採択された参加者アピールは次のように高らかに宣言しています。
(前略)
私たちのような小規模自治体は、山や川、海と緑を、そして国境をも守ってきました。住民の健康や福祉を向上させるとともに、地域の振興に取り組んできました。住民を主人公とする協働の取り組みも行ってきました。(後略)
今回のフォーラムでは、地域課題を解決するための自治体らしい創意工夫あふれた各地の取り組みが紹介、報告されるとともに、とくに、住民自治を保障している小さい自治体だからこその価値と、それを支える行財政制度の仕組みが必要であることが、明らかになりました。あらためて、小規模自治体の果たしてきた価値、今後も引き続き果たさなければならない役割を、痛感させるものとなりました。私たちは、これらを胸に、それぞれの地域で、住民生活と地方自治の発展のため、力を尽くします。私たちのこれからの取り組みにぜひご理解、ご協力をお願いいたします。
http://d.hatena.ne.jp/jichitaiforum/20100928
大きいも小さいも(いや、小さいも大きいも、だな)全国の自治体の皆さま、引き続き頑張っていきましょう。