自治体法務の備忘録

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公職選挙法関係の例規

 先般、ハンコを利用した記号式投票についてご紹介しましたが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20101206/p2)、同投票の根拠となる日田市の条例は以下のような記述になっています。

【記号式投票に関する条例】
 日田市長選挙の投票については、公職選挙法(昭和25年法律第100号)第47条(点字投票)、第48条の2(期日前投票)及び第49条(不在者投票)の規定による投票を除き、同法第46条の2第1項に規定する記号式の方法によるものとする。
http://www.city.hita.oita.jp/~reiki/reiki_int/reiki_honbun/ar08600481.html

 条名のあとのカッコ書きが気になりますが、これは当時の公職選挙法の条文見出しです。
 現在は改正されましたが、当時の公職選挙法では、本文中における条名の引用に、いちいち見出しを引用していまして、少なくない自治例規もそれに倣っていました。
 このことについて、衆院法制局OBの吉田利宏氏は以下のように述懐されます。

 私が公職選挙法の改正を担当していた平成7、8年頃には、このかっこ書をなんとかしなければいけないということが改正のたびに話題に上がっていたものです。しかし、「このかっこ書を全部抜く改正をどのように表現すれば良いか?」という技術論の壁があったり、「議員の受け止め方はどのようなものなのだろうか?」という政治論の壁があったりとなかなか実現できませんでした。
(67頁)

法令読解心得帖―法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方

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 結局、147回国会で改正に至ったとのことですが、その手法は

 本則中「(())」書を削る。

の1行ですんだそうです。
 法律における見出しの引用が「(())」(二重カッコ)であったために可能であった手法ですが、「()」である上記の日田市条例ではその手法は難しそうです(法律番号も削られてしまう)。日田市条例は条文が少ないので、逐一の引用でも手間がさほどではありませんが、条数が多い例規ですと、国に倣った手法が使えないのはちょっとやっかいです。
 まあ、そもそもの国法が罪な話しだよね。