自治体法務の備忘録

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でもやるんだよ

 私が著作を楽しみにしている映画評論家に町山智浩という方がいます。
 カリフォルニア在住ということから、アメリカの政治やスポーツに関するコラムでもご著名。10年ほど前は、新宿のお店で行われたトークライブに、私も何度か足を運びました。
 その新宿のお店で行われた最近のトークライブでのご発言に、なかなか励まされるものがありました。音声のみの視聴であったのですが、その場に行きたかったな。
 「ハートロッカー(イラク戦争の爆弾処理班)」「マイレージ・マイライフ(リストラ通告人)」「レスラー(中年過ぎのプロレスラー)」といった苦難の仕事人を描く映画を取り上げて、そこに込められた意味を熱く訴える、いよいよお話の最後の部分を抜粋します。

 「でもやるんだよ」なんですよ。
 「でもやるんだよ」がなぜ偉大かというと、これは「大人」の考えなんですよ。
 「でもやるんだよ」って無茶なことをいってる訳じゃないんですよ。
 世の中不条理で正義も勝たないし、ね、金持ちがえばってて貧乏人とか正しい者がどんどん踏みにじられているけれども、でもやるんですよ。わかってると。
 だからやだ、世の中ってのは汚い、自分が入り込める要素がない、金持ちの息子は、ね、その金持ちで、もう俺の入る余地がない、って文句いっているうちはまだ「子ども」なんですよ。だから俺は何も働かないよ、そうじゃない。
 それぞれ人間全部、生きてきて、生まれてきたからには何か理由があるはずであって、それを見つけるために「でもやるんだよ」でやることが、「大人」になることだし。
 あの、僕が言ってる「大人」っていうのは、いわゆる世間がいう「大人」とは違う「大人」なんですよね。これは荷物を背負うことなんですよ。義務を背負うこと、それを自分から背負うこと、なので。
 僕は、さっき一番最初にいった「映画評論家」っていう、自分の身不相応のね、そんな能力もないのに言ったのは、言ったからはあと死ぬまでもう勉強し続けるしかないっていう荷物を背負った、ということなんですよね。で、そういう意味での「でもやるんだよ」ていうのが一番大事なのに。
 で、「ハートロッカー」もそうだったし、他の映画も実はそうなんですよね。
 だから、どんどん、どん底に落ちていって、「おまえは駄目だ!」「俺は駄目だ、何にもないよ!」「でもやるんだよ!」なんですよ。
 「でもやるんだよ」を忘れた人には、ちょっとね、困ったなというとこなんで。

 ふと気がつけば、私が新宿の店に通っていた頃の氏の年齢に、自らが近くなっています。
 前後してしまいますが、氏は上記の発言のちょっと前に、最近の商業誌における映画評論の質に苦言を呈し、自分の仕事に込める思いを語ります。

 僕は漫画家にもなれなくて、ロックンローラーにもなれなかったんで、やっぱり、これでロックンロールをやってるだと思ってるんです。漫画を書いている、そういう表現をしているんだと思う。

 あなたはたまたまその仕事についているのかもしれない。何で俺が、と思うかもしれない。他の人がやってくれれば、とも。
 でもやるんだよ。
 そう訴えかけるようです。
 さあ、ロックだぜ。