自治体法務の備忘録

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逆説の政治哲学

逆説の政治哲学 (ベスト新書)

逆説の政治哲学 (ベスト新書)

 「正義が人を殺すとき」といささか物騒な副題が付いている本書、佐藤優氏(元外務省主任分析官)が解説を書かれていることに気がついて購入しました。

 会社やPTA活動といった多くの人間が集う場所には、必ず幾つかののグループが形成されているはずです。また、そうしたグループの中で主導権を握る人、なぜか一つのグループを敵視する人、グループ間の小競り合いを惹起する人等々が存在しているはずです。さらには、このグループ間をうまく立ち回ったり、駆け引きをしたりする人間が出てきます。こうした人間に対しては、いささか侮蔑的な意味合いを込めて「あの人は政治的だ」と呼んだりします。極めて卑俗な「政治的な人」という表現ですが、ここにも我々が政治を考える際の重要なヒントが存在しています。
(12頁)

 いささか長い引用になりましたが、佐藤氏も解説で引用されている上記の内容は、私が政治学者の方から聞いた前述の「政治の本質」を思い起こさせます。
 本書は、マキャベリヒトラーシェイクスピアに、旧約聖書の「ヨブ記」までの言葉を引用し、「政治」の意味を明らかにしようとしています。もちろん、紙幅には限りがありますので、論の展開には限度がありますが、それぞれの記述の終わりには「発展的に読書をするために」と題された書籍ガイドの掲載があります。著者の紹介だと、プラトンとか読みたくなるね。
 なお、著者自身が書かれるところでは、市議選に出馬されたご自身の大学時代からのご友人や、市議会議員の方から「政治について真剣に考える際、参考になる古典を是非とも紹介して欲しい」と要望されたことが、執筆の契機の一つになられたそうです(266頁)。
 自治体議会の議員の皆さまのほか、「政治」に翻弄されるとともに、それに立ち向かわざるを得ない自治体の職員も、機会を見て内容をご確認されてはいかがでしょうか。