都道府県条例で定めるべき基準を市町村条例で定めることは可能か
このたびの一括法に基づき自治体が定めるべき各種の基準について、都道府県条例で定めるべき事項を市町村条例で定めることができるか、という問題については、拙blogでも過去に掲載しました。
【事務処理特例条例と権限移譲】http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20110924/p1
上記の記事では、権限移譲に関し、現行の地方自治法を読む限りは、これを是とする解釈は困難なのではないかと記述させていただきました。
その後、「墓地、埋葬等に関する法律」に係る都道府県から市町村へ権限移譲されている例をとって、これを可能と解釈すべきではないか、との意見に接しました。
同法を巡る都道府県条例と市町村条例の関係については松本逐条にも解説があります(最新の第6次改訂版だと1215頁)。権限移譲としては代表的なものなのでしょう。
しかしながら、同法に基づき制定されている条例の内容はと見れば、そもそもが知事の権限の範囲です。
【墓地、埋葬等に関する法律】
第十条 墓地、納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。
2 前項の規定により設けた墓地の区域又は納骨堂若しくは火葬場の施設を変更し、又は墓地、納骨堂若しくは火葬場を廃止しようとする者も、同様とする。
※強調はkei-zuによる。
知事権限を自治法252条の17の2の規定により市町村に行わせるに際して、当該市町村がその事務について条例を定める事は問題がありません。
市町村が処理することとされた事務については、当該事務が市町村の事務になるものであるから、必要に応じて、市町村が当該事務処理のため、法令に違反しない限り、条例又は規則を制定することができる。
(1215頁)
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となると、今回の一括法で「都道府県条例で基準を定める」と明文で要請されているのとは状況が違うように思えます。条例を制定するのは議会であって知事ではないからです。
自治法に基づく権限移譲に関する根拠が改正されていない現状で、都道府県が条例で定めるべき基準を市町村条例で定めさせようとするに際しては、何らかテクニカルな構成が必要ではないかと思われます。