自治体法務の備忘録

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続・「地域主権改革一括法の解説」

 先日紹介させていただいた標記の書籍につきまして(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20111216/p1)、早速入手しました。皆さまにもご確認頂きたく思いますが、取り急ぎ気になる方のため内容をご紹介させていただきます。
 今回の法改正で条例制定が要請される事項が細目的な事項であることは指摘されるところですが、筆者はその点を以下のように指摘します。

一括法の対象となった基準が枝葉のレベルになっているのは、一括法に問題があるのではない。法律が政令や省令に委任して、国の府省の担当課でしか説明できないような枝葉なレベルで自治体を縛っていたということに原因がある。
(408頁)

 その切り口には、思わず、ほほう、と声が出ました。
 著者は、また、そもそも存在する国の法制上の歪みを自治体で改革すべきだ、と記述します。具体的に事例を示せば、例えば本来は

 (1)根拠規定 「建築は知事の許可を受けなければならない」
→(2)要件規定 「周辺環境に適合した規模・高さ・色彩であること」
→(3)要件概要基準 「建築物の高さは、13メートル以下とする」
→(4)審査基準 「高さにはアンテナを含むものとする」

という構成が要請されるべきで、「(1)根拠規定」「(2)要件規定」が法律制定事項であるところ、現状は「(2)要件規定」が規定されず、いきなり「(3)要件概要事実」が詳細に定められたり、省令の申請書記載事項として細目的な事項が定められ、また、通知で審査基準を助言する例があるとします(145頁)。今回の改革は「(2)要件規定」以下の制定権を自治体が獲得したものであるとの興味深い指摘です。
 さて、今回の一括法の対処については、政省令の膨大な条項数を、法律に要請される条例でどのように規定するか技術的な懸念が示されているところですが、これについて著者は以下のように記述します。

 一括法により条例で定めるとされた事項の多くが政省令で規定された技術的な細目であることから、当該事項の全ての内容を条例で定めるよう義務付けているものではなく、条例から規則への委任を禁止しているものではないと解される。
(133頁)

 この点については、私も異論はありません。
 本書では条例整備の例が解説されてていますが、このたび一括法の対象となった膨大な法律をすべて取り上げるのは難しいようで、「道路」「河川」「公営住宅」「都市公園」「児童福祉」「高齢者福祉」「職業能力開発」の各分野について、その指針と条例・規則事項等の「仕分け」について説明されています。その具体的な内容は本書をお手にとってご確認ください。
 ただ、例規整備に関して気になったのは上記に続く以下の記述です。

このため、政省令の基準を一括して条例から規則に委任する場合もあり得ると考えられる。

 その発想は、

法律が一定の事項を条例で定めるよう規定しているものは、多くの場合、法令で定める予定がないことを明確にするか、法令で定める基準によらない場合を許容することを明示するものであると考えられる。逆の言い方をすれば、法令による事務処理の基準の定めは、自治体の事務処理の基準の策定権限を国が代行し、制約しているものであり、「条例で定める」とする法律の改正は、そうした制約を解除したものと言うことができる。
(65頁)

という視点から、そもそも地方自治法に基づく条例・規則制定事項に係る判断基準に従うもののようです。
 しかしながら、法律が「条例で」と要請する事項に関し規則への「白紙委任」を思わせるものとして、この点については見解が分かれるのではないでしょうか。