自治体法務の備忘録

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図書館「次のお薦め」波紋…読書履歴は個人情報

 「あなたにはこんな本がお薦めです」などと、過去の貸し出し情報などから、各人の関心にぴったりの本を薦めるリコメンドも、目玉サービスの一つだ。
 ただ、リコメンドするには貸し出し履歴をCCCが蓄積して分析する必要がある。さらに、履歴を匿名化した上で提携の小売店に提供し、市場調査に活用することも検討されている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120526-OYT1T00457.htm

 これは難しい問題。
 図書の貸出履歴をどの程度センシティブに扱うかについて、武雄市長はご自身のお考えから否定的であるようですが、米国が911事件後に愛国者法(USA PATRIOT Act)で、治安維持のために、政府機関による図書館利用記録等の収集を可能としたと聞けば、個人の思想の把握につながりかねない危険性について理解しやすいように思えます。
 私自身、amazonで書籍を購入後リコメンド機能で関連書籍が紹介されるのに、最初は薄気味悪さを感じたのは確かです。とはいえ、紹介される図書を購入することも少なからずあり、慣れてしまったのが現状ではありますが。
 実際のところ、自宅でインターネットを利用して図書予約をする際に、ブラウザの別ウインドウでamazonの関連リコメンドを追いながら登録することも多い。そんな「二度手間」の際には、それらが一体化していれば、と思わないでもありません。
 とはいえ、図書館での情報取り扱いについて、私が慎重であって欲しいと思う理由はamazonとは異なる分母の大きさです
 データの管理に当たって母数の小ささは、適正な結果を反映できないばかりでなく統計上の「ノイズ」を生み出しかねません。
 また、人口規模の小さい自治体では、特定の書籍を利用する人間も限られてしまうでしょう。リコメンド機能で紹介される書籍を追うことにより、特定の思想・信条を持つ人間(団体)が判明することもあるかもしれません。*1
 ヒッピー出身のスティーブ・ジョブズは、やはりその危険性について自覚的で、アップルの製品では、個人情報を同社に発信する際には慎重に承諾を求めてきます。
 「Genius」と呼ばれるiTunesの機能の便利さは、私も以前に記述したことがありますが(http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20120314/p1)、同機能も当初はオフ設定が仕様です。
 もっとも、上記のGeniusで私がぼんやりと感じるように、最近は「あふれる膨大な情報を自分に代わって誰かに管理させたい」という要請が、従来の個人情報の慎重な取り扱いに比して現れてきているようにも思えます
 「あらゆるものがデータ化する」過渡的な状況なのかもしれませんが、であればなおのこと、その具体的な対処に当たっては、個別の効果や問題点について慎重であって欲しいと思うところです。

*1:例えば、私が利用する図書館でも「こんな本、俺のほかに誰が利用するんだろうな」と思う本があるのです。