自治体法務の備忘録

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私はどのように文章を書いているか(ネタバレあり)あるいは読書感想文はどのように書くか(中学生向け)

 夜中にパソコンに向かっておりましたら、中学生の娘に声をかけられました。
娘「文章の書き方、教えてよ」
 良い具合に頭が巡航速度で回っていましたので、思いつくままぽんぽんと答えたのですが、忘れないうちにメモしておきます。
 私ごときが文章作法なぞ誠に厚かましいかと思いますが、世のお父様方が娘にコメントする際の参考になれば幸いです。

【何を題材にするか】
「ネタに困ったらどうするの?」

 いきなり厳しいね。
 君も読んでた星新一、1001編も小説を書いた人だけど、エッセイでこんなことを書いていたよ。「アイデアは異質のものの組み合わせ」なんだそうだ。
 で、こんな例えを書いてた。「時代の最先端は何だろう?宇宙を飛ぶロケットか。一方で時代遅れのものはなんだろうか?例えばキツネ憑き。じゃあ、キツネ憑きの男をロケットに乗せてみよう」ロケットの中で何が起こるか、に想像力が働くわけだ。
 「手術台の上でミシンとこうもり傘が出会う」なんて例えもある*1。異質のものの組み合わせは、図形の問題で補助線を引いた途端に思わぬ視点が開けるように、ことの本質を明らかにすることがある。

【文章の書き出しについて】
「書き出しはどうするの?」

 カギ括弧でくくった台詞から始めちゃえ。「何これ!」でも「びっくりしたー」でもなんでも良い。
 印象的な書き出しは、読み手を引きつけるものとしてよく紹介されるけど、お父さんの経験では、書き手のモチベーションを高める効果が大きい。自転車も最初の一漕ぎに一番力がいるだろう。書き手自身がリズムに乗るためにも、勢いのある書き出しは大事なんだよ。
 追加するとね、書き出しの文章は、読み返した後でごっそり削っちゃった方が良い。作文を書くと、書き出しの分量が多い頭でっかちで、規定分量の最後に、あわてて結論を書いたようになることがあるだろ?
 文章は勢いが付くまで結構量を取るものなんだ。勢いに乗っちゃうと、それほど苦労しないんだけど。これも自転車と同じだよね。
 池上彰さんは「大変です!○○なんです!」と書き出すと、わかりやすく文章がまとまる、って紹介してた。で、清書ではその書き出しの部分を削っちゃうの。これなんかも発想が近いかな。

【文章の膨らませ方】
「最初と最後は決まっているんだけど…」

 こないだ読んだ本*2に書いてあったんだけど、「周りに見える景色」を書きなさい
 最後が決まっているということは、書くべきことは決まっているわけだ。それをどうやって膨らませるか。
 具体的な描写は読み手の感情移入を誘うだけじゃない、「その場で何を見て何を感じたか」は君にしか書けないことなんだ。
 例えば、部活の大会で緊張した、それは一緒に参加した他の生徒にも書けるよね。だけど、空を見上げた、晴れ渡った空に鳥が飛んでいて緊張がほぐれた、という描写までは君個人にしか書けないことだろう?
 素人が文章を書くときの基本に「知っていることを書け」というのがある。そこに期待するのは、「周りに見える景色」が血肉になっているからだよね。

【読書感想文の書き方】
「読書感想文なんだけど…」

 ぐはっ、読書感想文か。
 学校で課題になる読書感想文の根本的な問題は、「感想文として書くべき落としどころ」が読書の楽しみにつながらないところだよね。
 わかりにくい?言い換えると「おもしろい感想文」って望まれていない、ってことかな。
 余計な話しをしたな。さっき言った「周りの景色」と同じように考えてみようか。
 最後にまとめるべき「方向性」が決まれば、その「方向性」に向けて君の感情の中でどんな動きがあったかを書けないかな?喧嘩した友達が和解する話しであれば、似た事例が君にあったかを考えて見ても良い。
「読書感想文って、感想を書くの?自分の考えを書くの?」
 おおっと、良い質問だ。
 「感想」って何だろう?「楽しい」「驚いた」「くやしい」といった感情の動きが主なものかな。あるいは、学校の課題読書感想文であれば「ありがちな落としどころ」であるかもしれない。
 「考え」って何だろう?これは君の経験からわき上がってくる「ツッコミ」みたいなものかな。漫才の「ボケ」に対するね。この場合、読んだ本が「ボケ」なわけだ。
 一般的になりがちな「感想」に対して「考え」は君個人のもの。であれば、「感想」に「考え」をどのように絡ませていけば「君にしか書けない読書感想文」になる、ってことかな。
「読書感想文って『と思った』で、ずっと書けちゃうよね」
 書けちゃうねー。語調の整理は、文章を書いていて気を遣う点だよ。
 でも、さっき説明した「ツッコミ」の部分を膨らませてみると、結構、文末の書き方は工夫ができるんじゃないかな。

【one more thing】
 最後に一つ教えよう。
 文章はその内容を「自分の問題」として引き受けた際に、説得力が全然違う
 例えば、地球温暖化という大きなテーマを題材にしても、参考資料の引き写しだけじゃなく、自分はどうすべきなのか、何ができるか、まで踏み込んだときに出る迫力は全然違う。

 そこまで話した当たりで、
「もう寝なさーい!」
と妻の声(汗

*1:ロートレアモン

*2:近藤勝重『書くことが思いつかない人のための文章教室』